零の旋律 | ナノ

V



 白は嘆く

「この世界には罪を犯した人、それこそ大罪人程生きられるなんて歪で歪んでいる。生存するのは何故――それは罪人たちの楽園があるからだ」

 白き衣に身を包み
 白き刃を持って断罪しよう
 紅き罪人を、赤き罪人を、朱き罪人を
 ――殺せ
 平穏なる大地を夢に

「犯罪者が生き残る大地など必要ない」
「何故、この地で生き続ける――」
「大切な人を奪われて、殺して――その犯人が生き続けるなんて歪みは許さない」

 ――滅ぼせ滅ぼせ、愚かなる罪人を

 白き断罪を手に
 紅き闇を滅ぼせ


「朝がくれば夜がくる、けれど、この牢獄に朝も夜も関係はない」

 真夜中。本来なら暗い闇夜の中に星星がそれを輝かす。
 けれど、罪人の牢獄は常に灰色の曇天とした上が見えるだけ。
 闇夜の場所ならば白く反射するだろうその衣も、唯、その場に白があるなと思わせるだけ。
 漆黒の髪が闇夜と同化することもない。

「さようなら、裏切り者達の牢獄よ」

 白き刃で罪人を一突きにする。
 その街には、その場所には、真白な衣装を纏う青年がいた。
 そこは――幾人もの罪人の死体が倒れている。数分前に殺されたばかりだろう。血は鮮血。

「断罪しよう。罪深き朱の罪人達を」

 青年は口走る。淡々と

「さようなら、裏切り者達の牢獄よ」

 青年は同じ言葉を二度繰り返す。それは自身に掛ける暗示のように――何処かその瞳に寂しさが宿ることに誰も気がつかない。この場所に生きているのは、その青年だけだから。



 翌朝、その場所を通りかかった罪人は発見する
 また罪人が殺されたと――ここ数日で罪人達は殺され続けた。
 このまま殺され続ければやがて街は機能しなくなる――。

 白き断罪は動く、全ての罪人を抹殺しようと。罪人の牢獄を滅ぼそうと。


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