T ――失わせはしない。もうこれ以上失いたくない。 ――例え、それが誰かの命を奪う行為だとしても、守りたいモノを守りたい。 「お前、戦えるのか?」 朔夜の精神面を気遣って凛舞が声をかける。朔夜は唇を噛みしめならが、首を縦に振る。 皆が頑張っている中、一人だけ逃げるわけにはいかない。 「協力するぜ、蘭凛」 朔夜と一緒に篝火もやってくる。雛罌粟は悧智の相手で手一杯だ。 「済まない……俺たちの身体のせいで」 時間帯に関係なく戦えたらどんなに良かったか。雛罌粟に迷惑をかけることも、篝火と朔夜の手を煩わせることもなかったのに、そう思わずにはいられない。 「気にするな、俺たちが悲しんでいる時、その分戦ってくれたのは蘭凛だろうが」 篝火の言葉。立ちあがるまでの間、自分たちに攻撃が来ないように、戦わなくていいように雛罌粟と蘭舞、凛舞は気を使ってくれた。今度は此方が守る番 「全く、妙なところで結束力があるのね」 首を左右に振って、砌は呆れる。悧智とは違って楽しそうな顔はしない。そもそも砌は戦闘に楽しいを覚えた事はない。 「あれだけ戦って、疲れ一つないのかよ」 「あら、この程度で疲れるような軟じゃないわよ、私は」 清々しい顔で答える砌に、篝火はどれだけ体力があるのだよ、と思わずにはいられない。 篝火自身も体力には自信があったが、砌は二対のメイスを軽々と振りまわしている篝火より体力は使っているはずだ。 「まぁ、そろそろ散ってくれると私としても嬉しいんだけどね」 軽々とメイスを掲げ、頭上で振り回す。 「……(舞、結局貴方は貴方の目的は達成できなかったのね)」 砌はある程度離れた場所で倒れている舞を一瞬だけ見つめる。 「私は……目的を達成できないままはごめんね」 メイスを一旦振り回すのをやめ、地面に置く。そのまま、ゆったりとした足取りで、雛罌粟と高度な術と体術を繰り広げている悧智の方に近づく。 何を企んでいるのか、篝火と朔夜は様子を伺う。 「悧智。どうするの? このまま続ける?」 「離れろ」 「わかったわ」 悧智の言葉通り、砌は悧智から僅かに距離を取る。悧智も砌の方へ近づく。 悧智が近くにいなくなったことで、雛罌粟は肩で息をする。荒い呼吸を整えようと必死だ。 「雛罌粟大丈夫か?」 「わ、我の心配は無用……それより、蘭凛は大丈夫……だろうか」 「あぁ、大丈夫だ」 「なら、よかった……」 雛罌粟が限界なのは一目瞭然であった。若い姿をとっていても、実年齢は八十を超えている。 体力面ではどう頑張ろうと、二十代の悧智には敵わなかった。 遠距離から術だけならまだしも、体術を駆使した以上、体力の消耗は早くなる。 [*前] | [次#] TOP |