零の旋律 | ナノ

第伍話:結末の時


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 第三の街入口
 雛罌粟は鋭い蹴りを繰り出し、悧智に攻撃をしていくが、徐々に蹴りの速度が遅くなる。

「どうした? 体力切れか」
「我を、舐めるではない」

 強気な態度を崩さない雛罌粟だが、額を伝う汗が疲れていることを示していた。

「姉様!」
「姉様!」

 蘭舞と凛舞も巧みなコンビネーションで砌に攻撃を繰り出すが、悉く砌に交わされる。
 煙草を取り出し、炎属性の術を付加し砌に投げるが、砌はそれを軽やかに回避する。
 蘭舞と凛舞は並び、ナイフを持った瞬間、二人の身体が発光する。

「何かしら」

 光が気になった砌はご丁寧に一度攻撃の手を休める。
 発光したと同時に蘭舞と凛舞の表情が焦りだす。光が収まるとほぼ同時に、蘭舞と凛舞は此処にきた当初と同じ姿――幼い少年に戻ってしまった。

「時間切れか!?」

 その様子に気がついた雛罌粟の表情も変わる。雛罌粟が使った術は、時間帯を誤魔化す術。
 その術は高度な術であり、長時間の使用には術の耐久性が低かった。
 その為、徐々に術の効果が弱まり、時間帯を誤魔化す事が出来なくなり、本来の時間帯の姿に蘭舞と凛舞は戻ってしまった。
 こうなると蘭舞と凛舞は戦えない。否、戦闘経験を積んでいる為、戦う事が出来ないわけではないが、実力がある白き断罪と戦うためには力も体力も足りなかった。
 蘭舞と凛舞は即座に砌の攻撃が届かない範囲まで逃げる。しかし、現在は六歳程度の外見の二人だが、着ている服は二十代の姿に合わせた物だ。歩きにくい。砌が蘭舞と凛舞を追いかければあっさり追いつかれる。

「!?」

 砌の頭上に雷が降ってくる。砌は咄嗟に右にずれて攻撃を交わす。
 気がつかずに攻撃をくらえば砌とて軽傷ではすまない。

「危ないわね……」

 間一髪の蘭舞と凛舞を救ったのは朔夜だった。


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