零の旋律 | ナノ

Z


「きゃは。まぁ私にとっては別にどうでもいいんだけどねぇ。本当に狂っているのは『普通』であろうとする人じゃないのぉ?」
「で、態々それを俺に言うためにその場に残っていたのか?」

 焔ではなく律が問う。

「いいえ。別にぃ、狂っていることを自覚している人にいって何の意味があるのかしらぁ?」
「……へぇ。流石は最果ての街の実力者か」
「あらぁ、有難う」

 梓は自分のペースを崩さない。例え、律の瞳が細められ殺気を放っていたとしても。

「何故わかった?」

 それは自らが狂っていることを認めるということ。

「きゃは、簡単よぉ。貴方の瞳はあの子と同じ色をしているのだものぉ」
「……」
「貴方はあの子と同じ、とーくの昔に狂いきっていることを自覚しているのだものぉ。でも、貴方の方が大分性質が悪いわねぇ。あの子は他者を拒絶したけれど、貴方は他者を拒絶しなかったんだものぉ」
「……」
「狂いが色濃くなった今、貴方は何をするのかしらねぇ? だからあれは、貴方を及ばせておきたいのよぉ。この地で暴れられて、あれの計画が狂ったら困るから」
「暴れてほしいのならお望み通り暴れるが?」

 律の手には大鎌が握られている。穂先を梓の方へ向ける。

「きゃは、私としては、血がみられるならそれでも構わないのだけれどもぉ。今はその時期じゃないから仕方がないわぁ」
「……」
「だから、通るなら通りなさいよぉ。――死霊使いさん」

 大鎌を律は消す。これ以上梓と会話する必要はないと判断し歩きだす。
 焔はその後に慌てて続く。梓と律の会話内容を全て理解することは出来なかった。
 ただ、わかったのは梓も律も狂っているということ、そして――自分も。
 梓の前を横切る時、梓の口元が妖艶に笑っていた。整った顔立ちは美しい、それが寄り一層歪みを強調しているように焔には映った。

「それでいいのよぉ……貴方も貴方も全てねぇ……」

 梓は廻る回る周る。いつかその身が傾くまで、彼女は踊り続けるのだろうか


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