W 「人を殺す理由に、大それたものなんてないだろ」 「……そうかもな」 「で、夢華を可愛がっていたお前は、悧智にも復讐するか?」 問いかけ。焔の一番の目的は最愛の人を殺した相手を殺すこと。 「いいのか?」 予想外の言葉に、焔は思わず聞き返す。 「というか、復讐する機会がありそうだからな」 明後日の方向を見て応える律に、焔は首を傾げる。 「は? どういうことだよ」 「俺の、知り合いにも夢華を非常に可愛がっていた奴がいるんだよ。……俺と同じさ」 「どういうことだ?」 「俺とあいつは同じ。あいつも、広い世界の中で、自分と大切な人だけしか見ることが出来ない。だから、大切な人が殺されたら復讐するだけだ」 大切な存在がこの世界で唯一自分を支えてくれる存在。 失った虚無感に耐えられない。 「つまり、悧智は俺が復讐するにしろ、しないにしろ何れ復讐されるわけか」 「復讐の連鎖は何処までも続く、途切れることはなく、な」 「……悧智はかなり強いぞ? 実力は折り紙つきだ。お前の知り合いが勝てるのか?」 悧智の実力は高い。人を殺すことを躊躇しない冷酷さも合わさって。 恐らく白圭と悧智が本気で戦えば、悧智も無傷では済まないが、最終的には悧智が勝つだろう。 「つまり、悧智は俺が復讐をするにしろしないにしろ、何れ復讐されるわけか」 「復讐の連鎖は何処までも続く」 「……悧智はかなり強いぞ。実力は折り紙つきだ。お前の知り合いが勝てるのか?」 悧智の実力は高い。人を殺すことを躊躇しない冷酷さも合わさって。 おそらく白圭と悧智が戦かえば、悧智も無傷ということはないだろうが、最終的には悧智が勝つだろう。 術に精通した悧智が相手では、相手も一筋縄ではいかない。 「勝てないよ」 「オイ」 「悧智がな」 「!?」 断言する律に、焔は驚きを隠せない。驚きのあまり瞬きを数回繰り返し、眼鏡が曇っているのか、と外して確認してしまう。 「どんなに悧智が術に精通していても、悧智が術者である限り勝てないよ。“あいつ”には。悧智に復讐するか?」 再度問いかける。復讐するチャンスがあるということは、律の知り合いの存在が自分と関わりあう相手なのだと理解する。そうでなければ、復讐するか? と律が問いかけてくることはない。 「するよ」 復讐は復讐しか生まなくとも、復讐をした後には何も残らなかったとしても それでも復讐する道を選ぶ。自身が復讐される側になることを承知の上で。 [*前] | [次#] TOP |