T そうして、焔は縄で縛られ建物の中に閉じ込められたのだ。 榴華と柚霧は銀髪に会いに行くといってこの場所を後にした。罪人が待機しているのは、榴華がいない間に逃亡する可能性を阻止するため。 焔は是から先の事を考えるでもなく、ただ黙っていた。 その時、外の様子が騒がしくなる。 「お前っ白き断罪か!?」 それが、外の見張りの最後の言葉。それ以降、見張りの罪人の声を聞くことはなかった。 静寂な空間。一体何が起きたのか扉の方に視線を集中させる。 扉が開き、外から一人の人物が建物に足を踏み入れる。 その人物はピンク帽子を被り、青紫色の髪。赤い瞳が不気味に光る――律だった。 右手には身の丈ほどある大鎌を所持し、白き断罪の白は赤く染まっていた。 「やぁ」 予想外の来訪者。 「おまっ! 何をしにきた。いや、それより外の罪人を殺したのか!?」 「邪魔だったからな」 あっさりと返ってくる言葉。 ただ、道行く途中邪魔だったから、殺したように。埃を払うようにいとも簡単に。 そこに罪悪感の欠片もない。相手が罪人だから、というわけではない。 相手が罪人だろうが、そうじゃなかろうが関係ない、そんな雰囲気が律から伝わってくる。 「第一その鎌はなんだ!!」 「武器」 またしてもあっさりと返ってくる。 「……律。お前非戦闘員じゃなかったのかよ。見張りの罪人だって決して弱くないだろうに……簡単に殺すなんて」 律のことを非戦闘員だと信じていたわけではない、むしろ疑っていた。 敵の攻撃を避ける時の身こなしは軽く、敵から攻撃を受けた事がなかった。 だからこそ、戦える、そう直感していた。 だが、大鎌を手に持ち、罪人をあっさりと――それも埃を払うかのように殺すとは想像だにしていなかった。 唖然とする焔に、律は僅かに笑みを浮かべる。 見る者全ての背筋を凍らせるかのような冷たい笑みを。 「焔、此処から脱出しよう」 いつの間にか大鎌は消えていた。 律は焔の元へ近づき、屈む。被っている帽子を外し、その中から短剣を取り出した。 「(いつも帽子の中に武器を入れているのか!?)」 ぎょっとしている焔をよそに、律は短剣で縄を全て斬る。焔を縛るものをはなくなった。 律は立ちあがり、焔が立つのを待つ。 [*前] | [次#] TOP |