零の旋律 | ナノ

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 他人や仲間、愛情といった側面の全てを否定した少年の言葉。

「ははっ。仲間想いの貴方が、仲間の身体を傷つけますか……っ!?」

 白圭は躊躇することなく紅於の身体を傷つけた。

「なっ」

 その行動に紅於は目を見開く。仲間の為に激昂した白圭が、仲間を傷つけると知って攻撃することは出来ないだろうと高をくくっていた。しかし、予想に反して白圭は躊躇なく攻撃してきた。
 紅於の一勝は左の鎖骨付近から右へ一気に斬り裂かれる。

「くっ……」

 紅於は急いで後方に下がる。

「な、仲間じゃないんですか!?」

 術を媒介しているのか、切り裂かれた部分から血は流れない。

「例え、それが貴様のはったりだろうが、はったりじゃなかろうが、私には関係ない。私が貴様を攻撃しない? ふざけるな! それこそ斎や由蘭に悪いだろうが!」

 白圭は力の限り叫ぶ。その言葉に紅於は一瞬目を丸くする。

「だから貴様の効力が本当だったとしても、私はお前を斬る」

 ゆるぎない信念。

「あはははっ……馬鹿ですねっ……」

 白圭は再び強く斬りかかる。先ほどとは段違いの速さだ。首を容赦なく跳ねる。
紅於の呪術が本当なのか白圭には知るよしもない。けれど白圭は斬る。胴体と首が二つに離される

「予想外ですね……。しかし、これだけは覚えておきなさい! 貴方達が滅びる事は変わらない。愛? 仲間? そんなもの何にもならない! そんなもの何の価値もない!」

 首と胴体が切り離されても紅於は死ぬことがなかった。首だけで話す。首と胴体は宙に浮いている。
 しかし、紅於の身体は砂になるように――崩れ消え去った。

「斎! 由蘭!」

 白圭は斎と由蘭に近づく。紅於を斬った時の外傷は見られなかったし、紅於自身にもダメージは言っていた。そうでなければ、紅於の身体を切り裂く事は出来なかっただろう。
 唯の張ったりだったのか、そう考えたがすぐに打ち消す。そんなことは今はどうでもいい。

「すまなかった……謝ってどうにかなる問題ではないのはわかっている。私は私は……何度過ちを繰り返せば気が済むのだっ!」

 返答はない。返答がないことは白圭が一番わかっている。心が締め付けられる。
 白圭は斎と由蘭を隣に並ばせ安置する。白いコートを脱ぎ、斎と由蘭の身体に優しくかける。

「私はやるべきことをやってくる」

 終わらせなければならない。これ以上犠牲を増やさない為にも、失っていった仲間の為にも。

「済まなかった二人とも……全ては私の責任だ。けれど……こんな私を今までおもっていてくれて有難う」

 白圭は心から感謝する。心から懺悔する。
 後悔の念がとどまることなく白圭を襲うが、それでも白圭は立ちあがる。
 立ちどまってなどいられないから。
 先へ進む。

「私は行くよ」

 白圭の目指す場所は最果ての街、罪人の牢獄支配者を殺す為に。
 それが、目的――

「さようなら」

 もう二度と会うことが叶わぬ仲間よ

「遙峰斎、湊由蘭二人は私の大切な仲間だ」

 せめて最後に二人の名前をその相貌を記憶に焼きつけさせて――


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