零の旋律 | ナノ

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「白圭。一つだけ……教えて」

 白圭からの返事はない。けれど斎は続ける。

「白圭は……水波と手を組んでいるの?」
「……そうだとしたら何かあるのか?」

 白圭が口を開く。

「ううん。五年前一体何があったの」

 斎は知りたかった。五年前に何が起きたのか。五年前、まだ罪人の牢獄にいなかった当初も、白圭に聞いた事があった。けれど、その時は教えてもらえなかった。頑なに白圭は口を閉ざした。
 傷だらけの白圭に何が起きたか、何も知らない。
 斎は感じ取っていた、是が聞ける最後の機会だと。

「答えて!」

 無言の白圭に斎は思わず怒鳴る。知らなければならない。何が起きたのかを。

「別に何もない。私は……水波の元で行動をしていただけだ! そこで私は真実をしった。罪美ろの牢獄がいかに愚かであるか、いかに被害者を悲しませる存在かを!」

 白圭は心の底から叫ぶ。この牢獄全土を覆うように

「はく……けい」
「確かに、私たちは大義親を滅さないといけないのかもしれない。けれどこれは違う!!」
「……」

 この空間で音がするのは結界と大剣が激突する音と、白圭の叫びだけ。

「罪人の牢獄で罪人を生かしておくなど、おかしい! そのようなことがあるのに、私情を切り捨てることなど出来るものかっ」

 斎は白圭から数歩下がる。斎が先ほどまでいた場所に大剣が突き刺さり砂を抉る。
 篝火や郁ほどではないが、斎も身軽に動ける。白き断罪で身体を鍛え、烙に剣技を教えて貰ったからこそ、ある程度は接近戦もこなせた。

「……私情なんて、切り捨てられるものじゃない。だから白圭は此処に来たんでしょ? 仕えるべき国に教えるために」
「……」

 斎が温和な態度で口を開く。白圭は黙る。地面に突き刺さった大剣はまだ抜かず、攻撃をしてこない。

「白圭は優しいからね。俺は……白圭の優しさを知っている」

 斎は想い出を語る。

「金の瞳を忌み嫌っていた烙を、怪訝な表情一つせず心よく受け入れてくれた白圭の優しさを、、家族の話をするときの嬉しそうな顔をする白圭を、由蘭が試験でいい点を取った時に我が子のように喜んだ白圭を」

 斎は艶笑しながら、少しおどけたような動作を加える。


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