U 「お前はっ!!」 白圭は大剣を斎の方へ向ける。白圭から斎への宣戦布告。目はぎらぎらと憎しみに輝く。 「……白圭」 斎は弁解もしないし、弁明もしない。白圭の行動を受け入れる。 斎は手に札を握る。白圭相手に何処まで戦えるかわからない。 単純な実力は白圭の方が上であり、斎は白圭を殺すつもりがない。 「……俺は、由蘭を殺したよ」 悲壮な顔で、斎は告げる。例え由蘭が望んだ事であっても、斎が殺した事実は変わらない。 どんな理由があろうとも、殺した言い訳にしか過ぎない。 白圭が自分を殺すのならば、それで怒りが収まるのなら――何も知らないままでいてくれるのなら。 「ふざけるな!!」 白圭の、見た目とは反した俊敏な動きに、一瞬反応が遅れる。 しかし、距離があった事が幸いして、斎は白圭の大剣を寸前の所で回避する。砂がじゃりっと音を立てる。 白圭は一撃で斎を殺そうとは思っていなかった。最初にしたかったのは、斎の隣に横たわる、何故か安らかな顔をしている由蘭を、斎の手から取り戻したかった。 「由蘭……済まなかった。謝って許される問題ではないことだが、すまなかった」 助けたかった。犠牲もなしに、罪人の牢獄を滅ぼせるなんて甘い事を白圭は思っていない。 それでも、犠牲が出ないように白圭はしたかった。けれど、理想とは裏腹に現実は残酷で、白圭の目の前で命は消えていく。 それでも白圭は目的を忘れる事はしない。罪人の牢獄を滅ぼす、その目的を諦めたら消えていった命はいったい何だったのか――そんな事はさせない。罪人の牢獄を滅ぼす、それが白圭の原動力。 「遙峰……私はお前を許さない」 「うん。それでいいよ。白圭」 「私の名を呼ぶなっ……」 白圭は大剣を振るう。今度は斎を殺すつもりで。戦いの被害が由蘭に及ばないように、由蘭から離れる。 斎は白圭の行動を理解し、無言のまま由蘭に攻撃が当たらない位置にずれる。 白圭の一撃一撃は重たい。一撃でも食らえば、斎の所持している短剣では負荷に耐えきれず折れるだろう。 白圭の攻撃を避ける為、斎は袖口から札を一気に五枚取り出す。攻撃を仕掛けてきた瞬間に札を投げ、空中で簡易結界を作り、白圭の攻撃を防ぐ。 結界と大剣がぶつかり合い、白銀の火花を散らす。 [*前] | [次#] TOP |