第弐話:白の集団 消えて 映る 消えて 映える さぁ、描け空言を 「じゃあ、今日は泊まるね」 「だから、帰れってんだよ」 話が一段落したところで、斎は笑顔で言う。時間的にはまだ一時間も経過していない。まだ朝だ。 徒歩10分の距離ならば、より道をして帰ったところで夕方までには家につける。 なのに何故帰らないと朔夜は思わずにはいられない。 「面倒っていっているじゃないか、一度外出したら家に帰るのは。雑魚寝出来るくらいの広さあるんだからいいじゃないか」 「そりゃあ、出来るけどよ」 「じゃあいいじゃん」 そう言ってから、斎は篝火に紅茶のお代わりを頼んだ。 篝火はそれを無言で承諾する。一人椅子から立ち上がり台所へ向かう。紅茶を入れるのは手慣れたものであった。 「……(なんでこの街……いや、そんなの明白すぎるか)」 斎は思考する。斎には気にかかることがあった。何故なら斎は白い服を着た集団が何であるか、その“可能性”に気付いていたから。 出来れば人違いであってほしい、そう願うばかり。 しかし好んで“白”を選ぶ集団が怱々ないことを斎自身が理解していた。 人知れずため息が出る 「……ちっ。郁は帰るのか?」 「はぁ? 何故、斎は泊まって私が帰らなきゃいけなくなるのだ」 「泉が心配するだろう」 「兄貴が起きる時間は私が寝る時間に近い。心配する要素がないだろ」 「そりゃそうか」 「納得するなら、最初から聞くんじゃねぇ」 郁はそう言って朔夜を軽く睨む。それすら日常的。 「相変わらず口が悪いぞ」 「お前に言われたらお終いだ。自覚あるか? お前が口悪いってこと」 「あるつーの」 眉間にしわを寄せる朔夜に、何れ眉間の皺が顔に定着するのではと郁は思う。 その後は適当な談笑をしたり、時々斎の物言いに朔夜が術を家の中で放とうとしたり、篝火がパン屋に言ったり、外から何かが聞こえてきたりと別段普段と変わらぬ時間を過ごした。 過ごしている分には白い集団が連続殺人をしている――とは到底思えないように感じる。 [*前] | [次#] TOP |