零の旋律 | ナノ

第七話:漆黒の愛


 柚葉は驚愕の瞳が律の視線と合わさる。
 柚葉に銃を放ったのは律だった。その光景を砌を含め、篝火たちは驚愕する。
 仲間が仲間を撃ったからだ。
 僅かに狙いがそれた事を認識した律は、無情のまま二発目も放つ。
 今度は確実に心臓に命中した。

「がはっ……」

 銃弾の衝撃に一瞬柚葉の身体は跳ねるがすぐに柚葉は倒れ動かなくなった。

「どういうことかしら?」

 砌の全てを射殺す事が出来そうな冷たい視線が律を貫く。仲間だと思っていた相手が、仲間を撃ち殺したのだから当然だ。

「……それに。貴方の腕前どう考えても非戦闘員じゃないわよね。動いている柚葉を的確に狙い撃つなんて芸当、訓練を受けている人間じゃないと無理よ」
「戦わなかっただけだ。戦えないとは言ったつもりはないけど? それにお前だって信じていたわけじゃないだろう?」
「まぁね。身のこなしからある程度想像はついていたけれど。それにしても予想外ね」

 砌の視界には既に朔夜と郁は入っていない。篝火は倒れた柚葉には目もくれず朔夜と郁の元へ駆け寄る。

「篝火、どうすりゃいいんだ!? 血が止まらねぇ」
「まずは止血が先決だっ」

 本来なら清潔な布で止血するのが最善だろうが、篝火は清潔な布を持っていなかった。
 仕方なく薄茶色の上着を脱ぎ、袖の部分を利用して止血する。

「すまないな、篝火」

 血を流しすぎたのか、焦点が合わない瞳で郁は篝火を見る。

「喋らなくていい」

 律は敵であるが、泉の親友。その律は郁の危機に柚葉を殺し、砌と相対している。
 砌の押さえつけてくれているのだろうか、篝火はそう思う。
 例え、律の意図が別の処にあったとしても、砌が来ない間に郁を助けなければ、篝火は焦る。
 ふと、泉がいないことに気がつく。身体は慌てているのに瞳は冷静に周囲を見渡していた。
 肉親である郁のことを泉は誰より大切に思っている。その泉が何も想わないはずがない。
 何か別のことを――郁に関係した事をしている。そう判断して、篝火は自分に出来ることをする。


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