零の旋律 | ナノ

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 律は立ち上がり、どうするかを思案する。
 律自身の答えは決めた――動くか、動かざるべきか


『見えるかい? この先に待っている結末が。どんなに転んでも、どんなに足掻いても。この先にある結末だけは変わらないのだよ。そう――この先にある結末は闇』

『何れ滅びるのなら、今滅びようと変らないさ。物語の結末は何時だって来るもの、だからねぇ』


+++
 舞は懸命に蘭舞と凛舞と戦っていたが、戦局は蘭舞と凛舞に傾いていた。
 それは単純に経験の差であり、人数の差。そして想いの違い。

「裏切り者っ!」

 怒りの感情に任せた攻撃は、蘭舞と凛舞に当たらない。実の兄である二人が相手でなければ、舞も此処まで感情的になることはなかった。怒りにまかせた結果、攻撃は単調なものであり、蘭舞と凛舞にとって見切るのは容易かった。

「……何も知らない事の方が、幸せだという事なんだよ……煉舞」
「何も知らずにいれば、俺たちを憎みだけで終わる」

 蘭舞と凛舞は悲しい想いを言葉にする。影が瞳に射すのを舞は気がつかない。

「何のことだよ!!」
「教えるつもりはない」
「なんだよ、いってくれなきゃわからないじゃないか!!」
「何も知らない方が、煉舞にとって幸せなことなんだ。……俺たちは姉様に手を出すのなら、煉舞を許すことは出来ないが、煉舞が手を引くのなら、俺たちは追わない。だから此処から帰れ」

 姉様に手をだすならと言いつつ、蘭舞と凛舞は本心では舞を殺したくなかった。
 煉舞は血を分けた兄弟であり、家族。舞の本名を煉舞(れんまい)と言い、蘭舞、凛舞にとっては末の弟。
 彼らは楽羽(らくはね)家という、雅契家の分家の生まれだった――


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