零の旋律 | ナノ

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「外見に現われているぞ、お前の心」
「……不覚ですねっ」
「天真爛漫なフリをしているのか?」
「あーもぅ、罪人なのに不良なのに、そんな言葉使ってくるってムカツクですよ!!」
「り、理不尽だろ!」
「理不尽でもなんでもないですよ、事実ですよ」

 柚葉がことわざや四字熟語を好んで会話に織り交ぜるからか、篝火までもそれにつられる。
 元々、篝火は泥棒一筋で生きてきた。勉強面の知識があるわけではない。しかし、篝火にとってそれらの言葉はとても馴染み深いものであった。

「そんな外見ふりょーに言われるなんて、なんかむかつくんですよ」
「だから、俺のどの辺が不良なんだ」
「そのバンダナと金髪と若干の露出とネックレスとチョーカーじゃらじゃらっですよ」

 柚葉は明確に応える。篝火はそうか? と自分の服装を見直す。若干の変化はあるものの、数年前から基本スタイルはこれでやってきた。

「別に自分ではそう思わないが……」

 自分の服装を見直したが、別段不良の要素は思い当たらなかった。

「まぁ、つまりあれですよ。ゆだんたいてーき」

 柚葉が笑顔で答える。

「!?」

 嫌な予感が全身に駆け廻る。篝火は直感を信じ、とっさに前かがみになる。
 悪寒が身体をはいずり回るような錯覚に陥る。

「隙あり! ですよ?」

 柚葉は身軽な動きで、手放した槍まで走り、槍を掴む。僅かに砂が掛っていたのを払う。
 柚葉が槍を取りに行くとわかっていても、篝火は動けなかった。直感が篝火に動くなと告げていた。
 例え柚葉が槍を取り戻しても、動かない方がいいと長年の経験に従った。

「でも、凄いですね。見た目によらず判断が的確ですね」
「どうも?」

 何かの術でも使ったのか、篝火はそう判断する。


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