零の旋律 | ナノ

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「なんや変わった銃やなぁ」

 そもそも、狙撃用の銃を所持していながら、姿を現すこと自体が変っていた。

「そう? 元は普通の銃だったんだけど、俺なりに改造したのさ。欠点はボルトアクションタイプ故連射には向いていないのと、一度失敗すると隙が出来ることさ」

 本来ならば、欠点を知られる事はタブーなはずなのに、あっさりと銃の欠点を話す。

「つまりや、欠点をカバーするだけの何かがあるってことやな」

 欠点を晒す、ということは欠点を欠点として見ていないか、欠点に対応出来るだけの自信が存在するから。そうでなければ欠点を晒す事は、自身を不利にするだけ。

「まっご名答」

 焔は銃を構える。狙撃銃だが、距離故スコープは未使用だ。
 榴華は全身に紫電を纏わせる。
 紫電の術は榴華が幼き頃から使える術で、身体全体に紫電を纏わせることで、相手への防御攻撃両方を可能とする。又ある程度なら紫電の範囲を広げることで相手への遠距離攻撃も可能とする利便性の高いものだった。

「その術嫌い」

 焔は紫電を見て嫌そうに呟く。以前戦った時、焔の攻撃は紫電に邪魔され、相手まで届かなかった。
 数歩下がり一定の間合いを取る。これ以上の距離は詰めない目安だ。焔は榴華に焦点を合わせるように銃を構える。

「じゃあいくかなぁ」

 榴華はのんびりとした口調でありながら、表情は真剣そのもの。戦闘に集中するためあらゆる雑音をぬぐい去る。
 榴華が近付いてくれば、焔は距離をとる一点に集中し攻撃はしない。一定以上の距離をとってから銃弾を放つ。榴華は確実に弾の動きを見切り交わす。余裕を持った交わし方は優雅ですらあった。

「……勝って下さい榴華」

 その様子を遠くから柚霧は見守る。


 全ての策はゆらりゆらりと動き、一つ一つ消えた歯車を埋めていく。
 最後に残るは何か。


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