W 「わかっていても、どうしようもない、想いがあるんだよ」 少数で滅ぼせる程、この牢獄はちっぽけな存在でない事を焔は重々承知している。白圭の計画がいかに無謀であることも、知っていた。 その上で焔は白圭の計画に従った、例え無理だと理解していても、心の中にある想いだけは止められなかったから。 「それはなんや?」 「そこまで答えてあげるほど俺は丁寧じゃない」 「……なら、まぁいいん。ただ、覚えておき。此処は間違いなく罪人の牢獄、だということをや。国の定めに従う事が出来なかった、集団だということをや、自己の為にしか動く事の出来ない集団だということをな」 「…………」 「罪人を放置して、生かすでも殺すでもなく、ただこの地に堕とす。――それでも、なおも生き続ける罪人達。それを知った被害者がどんな想いを抱くか、なんて想像はつくんよ。……多分、自分もそうするやろうしな。だから復讐することも滅ぼすことも理解は出来るん、けれど、だからといって滅ぼされるのを黙っているわけにもいかんのよ。自分にも大切な人がいるから」 「あぁ、知っている。だから俺たちは相対している」 相容れない事など、最初から分かりきっている。例え、そこにどんな復讐があろうと、理由があろうと――守りたいものが其々にある以上、交わることはない。 「話は終わりだ」 失った者を取り戻す事は出来ない。だから失わないように足掻く、足掻きもがいてその中で生にしがみつく。 焔は銃を構える。狙撃用の銃故、中距離で扱うには本来向かない代物だった。射撃用にスコープは付いていたが、そのスコープは通常とはやや異なっていた。焔が手にしている銃は、第二の街で戦った時の銃と異なったものだった。 [*前] | [次#] TOP |