零の旋律 | ナノ

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 斎は急ぐ。術を使い移動速度を上げる。術の乱発で僅かに疲れを感じていたが、気にしている場合ではなかった。誰が第三の街へ来るにしても――結局、斎の中では裏切り者扱いされても、白き断罪を自ら裏切ろうとも大切な仲間であることには変わりなかった。
 大切なのは烙だけではない、白き断罪の、篝火たちも斎にとっては大切な仲間。
 全てを守りきることなんて不可能だと斎は知っている。それでも、守りたいモノの為に斎は動く。
 無意味だとは思っていない、守りたい思いを否定することで後悔はしたくない。

「今、助けなかったら――俺は何時までも逃げ続けることになる」

 烙を陥れる人がいた時、本当は殺す選択ではなく、烙の傍にいて守るべきだったと気がついたから、
 勝手に殺して、勝手に罪人の牢獄に来た。烙の為、なんて言葉を使うつもりは一度もなかった、それでも――その結果、烙を寄り一層苦しめてしまったのでは意味がない。
 気がついたら前へ進める。大切な仲間を失わない為に。
 斎は他者を是からも殺すだろう。誰かを守り、自分を守るために。

「……それは、何も変わらないことなのかもしれない。けれど、俺は俺自身にケジメをつける」

 紅於が何処に向かったのか知らない。けれど、街の中ではないと推測して走る。
 早く見つけないと――焦燥に駆られる。
 紅於が出ていく時、引き留めるべきだったと自責の念にかられる。しかし嘆いている暇はない。


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