第伍話:想いの術 ――有難う俺の大切な相棒 斎は走る。 大切なものを失わないために、それが単なる自分の我儘だとしても、身勝手なエゴだとしても、自分の行動と思考が矛盾していたとしても、自ら手放す道を選んだはずだとしても。 全ての原理が、矛盾で、愚かしかったとしても、行動せずにはいられない。 沢山の想いがそこには存在して、例え矛盾していたとしても――傍には支えてくれる仲間がいるから行動出来る。 ――間にあえ! +++ 第三の街から少し離れた場所で二人は対峙していた。水色の髪は上で一つにくくられ、途中から別れている。髪は長く、地面につきそうな程ある。短いスカートから覗く脚はスラリとしている。全体的に華奢な身体付き。白い衣を身に纏いう。白き断罪第三部隊所属、由蘭(ゆらん)。 対して赤毛はおかっぱの髪型をし、赤い和装に身を包み、目元には黒いメイクか刺青を施した少年。第三の街支配者の部下、紅於(こうお) 由蘭は本を片手に。紅於は扇子を片手に一定の距離を保ちながら戦う。 由蘭は白き断罪の目的の為に。紅於は自分の目的の為に。 「こんなに可愛らしい方がいらっしゃるなんて、わたくし存じておりませんでしたわ」 相変わらず敵味方関係なく、由蘭は丁寧な口調で話す。 「……私と大差ないと思うのですが」 年齢は一つしか差はない。紅於は十四で由蘭は十五だ。 紅於は自分の平均身長より低い身長を気にしていた。その為可愛いは褒め言葉ではなかった。 何故なら身長が小さいから可愛いと言われる気分になるからだ。 「ですが……わたくしはわたくしたちの為に戦います」 「どうぞ。私にも私の目的があるので、容赦はしませんからご了承くださいね」 敵同士とは思えない丁寧な口調で会話する姿は、年相応には見えなかった。 [*前] | [次#] TOP |