零の旋律 | ナノ

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 例え離れていたとしても、例えどんだけ逃げ回っていたとしても、例え復讐の為だったとしても――傍にいてくれない方が辛い
 ――そのことを、律もわかっていない。

「何故、白き断罪。お主らはこの場所に留まっていた? 此処は街外れじゃ、結界も余り及ばぬ土地。砂の毒を知らぬわけではあるまいな? 我がいうのもおかしな話じゃが、街で暴れた方がお主らにとっては都合のいいことではなかったのではないか?」
「そりゃー、そうかもしれませんですけど、実際は違うんですよ」

 悧智ではなく柚葉が答える。雛罌粟達にとって、初めて見る顔だった、泉が新しく増えた白き断罪の隊員だろう。

「あたしらってどっちかといーと。接近戦が得意だよ集団ですから、障害物がない方がいいのですよーってのは単なる建前で、本当はあれですよ。此処で待ってれば実力者が勝手にわらわらしてくれるなら、先に倒しちゃってからの方が後は雑魚を倒すだけ、なんですから大した労力を使わずに効率よくすむってことですよ」
「……由蘭とかわらないくらいか?」

 朔夜の外見判断

「し、失礼ですよ。あたしは19ですよ。15の由蘭と一緒にしないですよ? 殺しちゃいますですよ?」

 最後に物騒な言葉を平然とはく、白き断罪第二部隊隊員柚葉。

「はっ!? 俺と同い年? ありねぇ……」
「私より一つ上!? ありえないだろ」

 しかし、朔夜の焦点はそこではなかった。驚くのは未成年組の朔夜と郁。

「えぇっ!? あんたたちこそあたしと同い年付近!? 老け顔ですね!」
「いや、お前が童顔なだけだ、絶対」
「そんなことはありませんですよ! この可愛らしさがわからないんですか? 全く罪人の牢獄は人の麗しさもわからないんですね。そういう人は地に塗れなさい! ですよ」
「うわぁ……コメントしづらいやつだ」

 朔夜の素直な感想。同い年とはどうしても思いたくはなかったのだ。

「では、言い換えてあげますですよ。肝脳地に塗れなさい! ですよ」
「そこじゃねぇ!!」

 朔夜は思わず怒鳴る。

「ってか、その言葉の意味なんだし!」
「敵に親切に説明して上げるほど、あたしは優しくはないですよ」
「……あー!! むかつく」

 朔夜が髪の毛に手を当てながら、唸る。どうにも調子がくるう相手だった。

「地に塗れるってのは、戦いに敗れることで、肝脳がついた場合は、むごたらしい死に方をすることって意味だ。朔夜」
「ほへー」

 丁寧に説明したのは、篝火。

「相変わらずお前、そういう言葉詳しいんだな、泥棒なのに」
「元だ、元」

 現在は泥棒はやっていない、そういう篝火だが、泥棒が原因で罪人の牢獄にやってきたのも事実だし、それに罪人の牢獄にきた当初は泥棒をやっていたのもまた事実であった。

「見た目ふりょーですのに、案外詳しいですね」

 柚葉が感心する。

「見た目不良ってなんだ、ってかお前誰だ」
「あー自己紹介まだですね、あたしは柚葉(ゆうは)白き断罪第三部隊所属の可愛い女の子ですよー」
「自分で可愛いいうか? 普通……」

 そして、呑気に自己紹介をするな、と心の中で思う篝火。

「オイ、別に俺たちは呑気に会話をするためにきたわけじゃねぇ、死ね」

 短気なのは悧智。いい加減、柚葉と彼らの会話を聞いているのも、飽きたのだろう。
 待たされるのがそもそも悧智は嫌いであった。

「んじゃあ、まぁ乱戦といきますか」

 それに同意するのは篝火。篝火は夢華を殺した悧智を許すつもりは到底なかった。
 何故悧智が夢華を殺したのか、夢華と悧智は仲間ではなかったのか。
 篝火は悧智が夢華を殺した理由を分からない


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