零の旋律 | ナノ

第弐話:トリカブト


『さぁ、動くよ物語が』
『踊れ踊れ、操り人形よ』

 終幕へ進むのなら――それは


 明朝、第二の街入口へ赴いた雛罌粟達の目の前に白。

「我らを待っておったのか?」

 白――白き断罪に問う。

「第二の街支配者である雛罌粟は、待っていればそちらから出向いてくれると思っていたからな」

 答えるは悧智。そして悧智は手に持っていた一輪の花を雛罌粟に投げる。
 雛罌粟はその花を受け取る。紫色の一輪の花

「……」

 雛罌粟はただ無言のまま花を見る。

「ぴったりだろう?」

 笑みを僅かに悧智は浮かべる。

「トリカブト……この場合は敵意と復讐か」

 雛罌粟は紫色の花――トリカブトじっと見る。

「正解」

 それは悧智から罪人の牢獄へ宣戦布告の証であった。夢華を殺す為、一人で行動していた時とは違う。
 トリカブトは宣戦布告するためだけにあしらえた花だ。

「良かろう。ならばこの花我らがしかと受け取った」

 悧智の宣戦布告を雛罌粟は受け取る。

「……悧智、帰っていい?」

 抗戦が開始されようというときに、場違いな声が響く。どんよりとした声色だ。
 この場いにいないと推測していた泉が律の視界に映る。
 泉の表情が恐ろしいほど笑顔だ。背筋が凍っていくのを律は感じる。
 律は心中で自分の作戦を呪う。寿命が今日尽きるのではないか、と錯覚すら覚える。

「いい、というわけがあると思うか?」

 無情な悧智の返事。視線も凍てついている。此処で逃げようとすれば悧智から容赦ない攻撃が訪れそうだった。

「だ……よなぁ」

 ちらりと泉の方を見る。
 ――笑顔だっ!
 ――あぁやばい、俺の寿命今日で終わったかも
 律は何も問題がなく逃げる方法を思案するが一向に見つからない。
 律の推測では泉は最果ての街にいた。だからこそ第二の街へ来た。
 出会う予定もつもりもなかったのに、出会ってしまった。出会いたくなかったのに出会ってしまった。
 ――郁や泉に出会いたい思いは隠しきれないってか冗談じゃない。
 作戦面では泉の方が一枚も二枚も上手だと、律は再度認識し、心中で負けを認める。

「あ……俺死ぬかも」

 思わず声に出してしまう。泉は何も言わない。ただ、笑顔でその場に立っているだけ。それが一番律にとっては恐怖だった。

 ――勝手にいなくなったのだから覚悟しとけ


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