零の旋律 | ナノ

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「榴華のところには、恐らく狙撃を得意とする焔だろう。榴華の紫電には迂闊には触れられないからな。そうなると、遠距離からの攻撃が一番いい」
「あの、髪の長い少女は」
「由蘭か、あれは榴華の元にはいかないだろう」

 泉は断言する。接近戦で迂闊に近づけない相手なら、遠距離からの術が得意なあの時みた少女が適任だろうと雛罌粟が思っての言葉だった。正確には少女ではなく少年なのだが。

「何故だ」
「そりゃあ、榴華は接近戦が得意だ、ある程度接近戦でも戦えるようなやつじゃないと、接近戦に持ち込まれたときに終わりだからだよ」
「……考えてみればそうじゃな」
「第三の街、第二の街にはそれぞれ白蓮、陽炎の隊長が一人ずついるだろう」
「実力者を分けるか」
「白圭と悧智の戦闘能力は、一部隊をまとめ上げる実力者だからな。一か所に集めるより、分けた方が効率いいだろう」

 二人が作戦会議をしている時、他の面々は蚊帳の外だ。

「柚葉と悠真は悧智の部下だから、悧智と一緒に行動をするだろう。後は……砌と焔は、隊内で一番仲が悪い、一緒に行動を共にするとは思えない。白圭と由蘭は一緒に行動をするだろうな。遠距離と短距離で、丁度いい能力バランスだから。……律の考える作戦はきっと、マトモではないだろうけどな」
「律とやらが、作戦を考えているのか?」
「多分な」

 普段の泉なら確証の無い事は言わない。しかし、確証がなくても雛罌粟は構わないと考えている以上、憶測でも構わなかった。第一、泉が情報を集める事に対して妨害工作を行っている律があちら側にいる以上、確証を得る事は叶わない。
 だが、それは一種の確証にも繋がっていた。律が作戦を立てている、という事に。
 そうでなければ、泉が情報収集出来ないはずがなかった。何故なら律以外、誰も泉の情報源を知らないからだ。泉は人づてで情報を収集するわけではない。

「色々面倒じゃな」
「まぁ一つ言えるのは、第二の街に一番人数を割くだろうな」

 第一の街の罪人が、現在第二の街へ移動していることを白き断罪が知らないはずがない。
 最果ての街へは、三つの街を滅ぼした後、合流して向かうだろう。

「そうじゃろうな、白き断罪は何時来る?」
「今日」

 泉はあっさりと答える。あっさりとしすぎていて緊張感も伴わない。最も泉が緊張している場面を雛罌粟はしらない。
 時刻は既に深夜を過ぎ、日付が変わっていた。
 泉はこれ以上、律が何も行動を起こさずにいないと確信していた。律とは長い付き合いだ、それぐらいの行動は容易に読めた。
 勝つか負けるか、滅びるか生き伸びるか、決着の時は近い。


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