零の旋律 | ナノ

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「戻ってきやがれよ」

 朔夜のひと言。斎が、そう決めたのならそう望むのなら、その望みを否定してまで、ここに束縛しておくことは出来ない。

「大丈夫大丈夫、俺は強いし、烙も強い、それに俺と烙は長年コンビを組んでいたからチームワークばっちりだしね」

 いつもなら、ここで短気な朔とは違ってねと、からかい文句の一つでも飛び交うところだったが、今はない。それだけ切羽詰まっているということなのだろう、斎にとっては。


「これが終わったら、夕日みてみてーな、綺麗なんだろ?」

 唐突な朔夜の言葉に、この場に漂っていた雰囲気が変わる。

「うん、綺麗だよ」
「俺見たことないからさ」

 生まれて19年、朔夜はずっと罪人の牢獄で生きてきた。太陽も知らなければ月も知らない。

 雨も雪も、大地の香りも自然の香りも。


「よし、じゃあこれ終わったら皆で行くか」

 篝火の言葉。朔夜に夕日を見せてあげたい。

「ってまて、罪人である私らがいけるのかよ」

 郁は冷静に突っ込む。

「その辺は、銀髪にでも頼んだらなんとかなるだろう」

 篝火はそう返す。この罪人の牢獄支配者である銀髪のことだ。外に出る手段などいくらでも持っているだろう、そう考えてだ。

「あやつなら、可能じゃろ。駄目なら実力行使でもしてしまうとよいぞ」

 雛罌粟も篝火の提案に賛同してくれた。
 そして、銀髪なら可能だと

「よし、決まり、皆でいこーぜ」
「あぁ!」

 朔夜の満面の笑顔に、緊迫していた雰囲気が和む。

 皆で見よう、夕日を



「じゃあ、俺いってくるね」
「はいはい、いってらっしゃいな」
「気おつけろよ、斎」
「勿論、朔に郁……篝火、ありがとう」

 斎は、その時本当にいい友人をもったと心から感じる。

「それに、烙もきをつけれーよ」
「そうそう」
「あっ……あぁ」

 朔夜と郁の言葉に、僅かに戸惑う烙。まさか今まで敵だった自分にも声をかけてもらえるとは思わなかったのだ、斎が罪を犯して、罪人の牢獄に来た期間、斎と一緒に行動をし、仲良くしていた中に、一人自分だけがやってきた、疎外感。それを何処かにあるのではと考えていた烙にとっては予想外のことだった。

「なーに、驚いた顔をしているんだ? 仲間なんだ、心配するのは当たり前じゃねぇかよ」
「ありがとうな」

 烙は心からのお礼を言う。
 敵であり、斎を傷つけた張本人である、自分を仲間だと言ってくれたことに、精一杯の有難うと感謝の気持ちを

「そんなことで一々お礼なんていらねぇーよ」
「ありがとな」

 大切な優しさを有難う。


 斎と烙は、目的の場所へ向かう。
 全ての真相を知る為に――


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