零の旋律 | ナノ

Y


「まぁもしあれならば、蘭凛をともにつけようか」
「姉様の命なら、俺らは何処でも行きますよー?」

 蘭凛は同時に同じ言葉を話す。別に意図しているわけではないが、気がつくと同じ言葉をいっていることが多い。双子だからなせることなのか、それとも何か深い絆で結ばれているか。

「だいじょーぶだよ、ってか、さぁ一ついっていい?」
「何だ?」
「俺ら、弱くないよ?」

 さっきから心配をされることが多い斎と烙だったがその実力は折り紙つきだ。

「だっから余計な心配はむよー」
「なぁ」

 そこで朔夜が声をかける。

「何? 朔」
「なんで、お前今日はそんなに語尾を伸ばすんだ?」
「!?」

 普段の斎と何かが違った。何処か無理をしているような、何処か張りつめていて、それでいて尚明るく見せようとしている。何処か無理が漂っていた。斎の口調に朔夜は最初から何か違和感を覚えていた。その何かわからないままだったが、此処にきて違和感の正体に気がつく。

「もー、朔って変なとこばかり鋭いんだね。気分転換すら許してくれないのか?」
「嘘だろ、それ」
「……俺が、あいつの元に真相を確かめに行きたいのは、確かに白圭……白き断罪のことが気になるから、それだけだよ。ただ……」

 いいたくないのだろう、斎の言葉が濁る。それでも、朔夜はきかないわけにはいかなかった。きかないと、斎を失ってしまいそうで。
 だが、斎は言葉を濁したまま、次の言葉が思いつかないようだった。

「由蘭のことだろ」

 斎の代わりに答えたのは、此処にきてからほぼ一言も発していない泉だった。
 時間が流れるだけなら――そう思って泉は口を開いた。

「由蘭……あの女男か」
「白き断罪内で何かが起きるのなら、由蘭をそれに巻き込ませたくないんだろ。それが勝手に白き断罪からいなくなり、且つ烙までも巻き込んだ身である自分が、巻き込ませたくないと思うこと自体身勝手な想いだと自覚しているからだろ。だが、それでも……大切な弟子なんだろ?」
「!!」

 最後の言葉に、斎と烙以外の一同は驚く。
 由蘭のことを斎と烙が気にかけているのは知っていた。けれど、まさか弟子だとは誰も想像をしていなかった。

「ほんとっに、ムカツクくらい情報屋だよね。これじゃうかうか秘密も出来やしない。……そうだよ、由蘭に術を教えたのは俺。まぁ烙にも教えたけど。だから由蘭がもし何かの陰謀に巻き込まれるのならば、阻止したいんだよ。大分我儘だよね……。勝手に白き断罪を裏切って、仲間を殺して、烙を此方に引き込んでさ。それでも……それなのにっ今さら由蘭の心配をするなんて、身勝手すぎるじゃん……!」

 結局、どんなに離れていたとしても、大切なものは大切で

「でも、だからって白き断罪と言う居場所を由蘭から奪いたくない……。あぁ、本当に何を言っているのかわけわかんないよね。でも……その整理のついていない、矛盾だらけで訳のわからないのが俺の本心なんだ」

 大切なものを裏切ることは出来ない。
 斎が人に見せる弱み。

「だから、俺にケジメをつけさせて、元白き断罪の一人として」

 そして斎が人に見せる覚悟


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