零の旋律 | ナノ

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 白に塗れる
 何ものにも染まる白は赤を白く染め直す。
 真っ白に真っ白に上乗せしよう

 穢れた大地を浄化しよう

 ――決してユルサナイ


「最近、白き殺人が起きているのだよ」

 斎は紅茶を一口飲んだ後、口を開いた。
 白き殺人という言葉に、朔夜は眉を顰める

「白き殺人? ここは罪人の牢獄だ。別に殺人なんか日常茶飯事じゃねぇかよ」

 特に気にすることもない、そういって切り捨てようとした。“その程度”のことで此処にやって来る必要もないと。

「あのねぇ、俺らがそんな日常茶飯事のために、不機嫌真っさ中の君に会いに来るわけがないでしょ。来るな真夜中に不意打ちしながらやってくるよ」
「斎てめぇ……だが、泉がこの場にいないなら、そんな危険要件でもねぇんだろ?」
「口は悪いけど頭はいいってとこがムカつく」

 斎は正直な感想を本人の目の前でもらす。
 朔夜は口悪く粗暴さが若干目立つため勘違いされやすいのだが、実際には頭は結構良いほうであった。

「いつ……」
「ストップだ、全く斎、お前は要件が済むまで必要最低限外喋るな」

 永遠と論争が繰り広げられうなのを仲裁に入るのが郁なのはいつものこと。
 篝火は一切とめには入らない。余程のことがない限り。
 篝火は紅茶を口に運ぶ。

「罪人が殺されている。それも結構な数が」
「ふうん。それはまさかお前らがやってきた時のような勢いでか?」

 郁は若干顔を顰めたが、事実である以上何も言わない。

「それを、上回っているといえば上回っている」
「曖昧だな」
「確かに結構な数の罪人が殺されている。それは強さ関係なく。つまり手あたり次第、といったことだ」
「手あたり次第……」

 朔夜はそこでようやっと事態を認識する。ただの殺人ではない――と。

「それにな、偶々目撃した目撃者によるとな犯人は複数」
「複数……」

 少し間を持たせて郁は重要なことを告げる。

「そして――犯人の特徴は全て白い服を着ている、白い集団」
「……つまり、白い集団による連続殺人事件」
「そうだ、罪人の牢獄で殺人は日常茶飯事。しかし集団の連続殺人、しかも手あたり次第となれば事は変わって来る」

 郁が厳かに告げる。
 罪人の牢獄、第一から第三の街では近頃罪人達が殺されていた。それは――日常的、と呼べない程に。
 罪人の牢獄各地での殺人は白い服に身を包んだ謎の集団による仕業。
  それはまるで赤き罪を白へ断罪しようとするように――と、目撃した目撃者は支配者へ告げた。

「……つまりこれ以上その集団を野放しにしておけば――滅びるってことか」

 例えいくら殺人が日常茶飯事で普段と変わりない出来ごとだったとしても、手あたり次第、誰構わず、ところ構わず殺害されていけば、罪人の牢獄は致命的なダメージを受けることになる可能性も零ではない。例え決して高いとは言えなくても。


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