零の旋律 | ナノ

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 罪人の牢獄第二の街――時は迫る

 全てが仕組まれていた合図のように彼らは集まる。
 雛罌粟の元へ到着した時、最初に夢華の事を話し手配して貰った。白い花を一面に用意して。手際は良かったが、時間の流れは早く終わった時には時刻は夜になっていた。
 雛罌粟の気遣いが篝火たちには有難かった。

「数日ぶりだな」

 昼間雛罌粟の元へ訪れた時は六歳前後の姿をしていた蘭舞と凛舞だが、現在は二十代中頃の年齢へ変化している。ピンク色の髪と赤い目をした青年は二人。其々反転させたかのような姿をしている。それは意図的か。

「久しぶり、蘭凛」

 篝火が代表して挨拶をする。蘭舞と凛舞は第二の街支配者雛罌粟の腹心の部下である。特異な体質であり、雛罌粟のように術で自らの年齢を変化させているのではなく、時間帯によって成長したり幼くなったりする。そう言った風にされてしまったと聞いていた。
 何が原因でそうなったかは知らないし蘭舞と凛舞はそこまで説明するつもりもなかった。

「蘭凛、雛罌粟は?」
「部屋にいる、案内しよう」

 年相応の雰囲気を醸し出しながら、蘭凛は雛罌粟の元へ案内する。自室の窓際に雛罌粟は立っていた。この街を見渡すように。

「待っておった」
「遅くなって悪いな」
「構わぬ。お主たちは我の元へ戻ってくるのを急ぐ必要は何処にもない」

 さりげない気遣いが心温まる。

「有難う、雛罌粟」
「礼を言われる筋合いは何処にもなかろうに」

 雛罌粟は扇子で口元を隠しながら微笑む。

「さて、本題に入ろうかの。その場で悪いが聞いてもらおうか」

 全員が部屋の中に入ったことを確信した雛罌粟は集まって貰った原因を話そうとする。

「是は我の推測でしかないのだが……と、一人増えておるな」

 途中で雛罌粟の視線は、今まで見かけた事がない青年――烙に向かう。

「あ、俺は烙っていいます」

 烙は素直に名前を名乗る。

「そうか、我は雛罌粟じゃ。すまぬな話がすれた。是はあの男から聞いたわけではなく我の推測でしかない、それを予め頭に入れておいて貰いたいのだが、この牢獄に政府と独自に通じている者がおる」
「……どういうことだ?」

 朔夜が真剣な表情で雛罌粟を見る。あの男とは銀髪のこと。誰も銀髪の事を率先して名前で呼ぼうとはしない。元々銀髪は政府との繋がりを持っている。此処で生まれ育ち、両親亡きあとは銀髪に育てられた朔夜はそれを知っている。しかし銀髪以外で独自に政府と通じている者がいるとは到底思えなかった。


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