W 「失礼だな」 「だって、千里の野に虎を放つようなもんじゃないですかーたいちょーは」 「毎回思うけどさぁ……」 悧智は僅かに言葉を濁らせる。なんだろと、柚葉は首を傾ける。 「お前、口調といっている言葉あってない」 「言葉の意味は間違っていないと思うですよ?」 「いや、知っている。だから、それなのに〜ですよ、とか。あたし、とかの口調が似合わないんだ。後、たいちょーとか語尾を伸ばすのも。馬鹿に見える」 「ひどっ! たいちょー酷いですよ。人を見た目で判断すると痛い目みるですよ。ってかたいちょーはあたしの口調をいっていたとしてもーあたしとかいうだけで寒気しますですよ」 ぷんぷんという表現が似合うような感じで、抗議をする柚葉。 実年齢は十九歳だが、到底その年には見えない。 そして、その見た目に反して、柚葉は実は結構物知りだった。 「ぶーぶー」 「そのガキっぽい口調をまず直したらどうだ」 「これは、あたしの特徴なんですよー」 「その口調の特徴をとっても、お前は存在感が濃いから問題ない」 「あー、そうですねぇ、悠真存在感ないですもんねー」 今度はけらけらと笑い、表情が色々と変わる柚葉。 見ていて飽きないな、と悧智は感じる。 「あーでも、たいちょーと意見が同じで安心しましたですよ」 「悠真は疑っているのか?」 「さー、どーでしょうね、あたしは知りませんけど」 「後始末処理班は二人で一人だろう……悠真を呼んで来い」 「はいはーい、わかってますよ。たいちょー、ではあたしは悠真迎えに行ってきますですね。失礼しますですよ、また来ますですよ」 そういって、悧智の部屋から柚葉は出ていった。 「騒がしいやつだ」 柚葉がいなくなった後の静かな部屋の中で、悧智は、やはり律は信頼に値する相手ではないことを改めて確証する。 何か腹にいちもつを抱えていそうな男。それが律の印象だ。 悠真を柚葉が連れてくるまでの短い時間悧智は瞑想する。 時間は刻一刻と過ぎていく。白き断罪が罪人の牢獄を滅ぼそうと行動する時間まで――後少し。 [*前] | [次#] TOP |