第四話:確かにあった華 「悧智!!」 烙が悧智に向かって切りかかる。悧智の拳銃を奪おうと真っ白い刀で拳銃を切り裂こう とする。 しかし、特殊な金属を埋め込んで作られた悧智専用の拳銃は刀を受け止める。 ――目的は達成した、長居は不要。 「烙!!」 斎が叫ぶ 「風よ、一陣の刃となれ!」 自分も術の影響で怪我をすることを覚悟の上で、悧智に術を放つ。 自分が怪我をすることを恐れて攻撃をしたら、悧智には勝てない。第二部隊の隊長である悧智には。 「は、術は……!?」 悧智は、あわてて後方に下がる。 烙は自身の間近で術を放った影響で、自身の身体のあちらこちらに切り傷がつき、血しぶきを上げる。烙にとってそんなことは最初からお構いなしだった。 夢華を攻撃したことが許せない。 それだけ。 仲間であるはずの夢華を殺そうとしたことが許せない。 それだけ。 夢華は大切な仲間 それだけ。 例え裏切ってしまったとしても その想いだけは変わらない 「何故、術が……!」 視線は夢華に移動し、合点がいった。夢華の真っ赤な瞳は瞑っていた。 しかし、悧智には納得出来ない事があった。悧智側の角度から確認出来たということは、夢華を拳銃で撃ってすぐに斬りかかってきた烙にそれを確認する術はなかったはず。それなのに何故――術を使えた。 ――!! まさか、斎の叫び声だけで そして、一つの可能性に気がつく。 「斎の……叫び声だけで状況を判断したというのかっ」 そんなことが可能なのだろうか。斬りかかった烙の名前を呼んだだけ、制止するために呼んだ可能性だった考えられるのに。それなのに何故術が使えると判断出来たか、悧智には理解出来なかった。 だが、それ以外に可能性は思い浮かばない。烙が術を使えると知る術が他に思いつかないからだ。 そしてすぐに悧智に術を使わせないためか、夢華の瞳は開いていた。 「俺と、斎のコンビネーションを舐めるな」 斎はすぐさま烙の隣に並ぶ。嘗て、白き断罪に所属してた頃を懐古する。抜群のコンビネーションを駆使して戦っていた頃を。安心して背中を預けられる相棒がこの場にいる事実を実感する。 夢華を篝火と郁、朔夜。そして泉に託して、自分たちは悧智と戦う事に集中する。 他の事に気をとられて命を落とすわけにはいかない。 後ろを任せられる存在がいることに安堵する [*前] | [次#] TOP |