零の旋律 | ナノ

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「なんか、あれだな。功罪、相半ばす」

 篝火が悧智について評価する。

「あー、あっているだろ」

 烙が同意する。

「……罪人なのに、よくそんな言葉知っているんだな」

 悧智が少し感嘆の意を示す。斎や烙は元々白き断罪に所属していたし、数年前までは政府公認の中央学校に在籍していた学生でもあった。しかし篝火はそんな教養があるようには見えなかった。

「少しは知っているさ、全くのもの知らずじゃあない」
「そうか、なら少しはその尊敬の意を示しながら、殺すか」
「結局殺すことは決まっているのかよ。全く」

『愛は憎悪の始めなのかな? まぁ、僕は憎悪なんてないけどね、あーなら愛は惜しみなく与るかな。例え、それを君が受け取ってくれなくても、僕は君を――』

「俺が、多少なりとそういったことを知っているのは、俺の相棒が、好きだったからさ。言葉が」

 悧智に聞こえないように、篝火は呟く。
 罪人の牢獄に来る前の、相棒の言葉を思い出す。
 慣用句や熟語が好きだった相棒を。
 いつか、誰かにその存在を話せるときが来るのだろうか、篝火は思う。
 その時、相棒を認められる気がした。篝火にとって。
 大切だけど裏切った。例え、どんなに嘆いたって、ごめんねも有難うもさようならも何一つ伝えられない。相棒はいない。何処にも。

 ――見守ってくれる人がいるからこそ。僕らは戦える


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