零の旋律 | ナノ

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「篝火……!?」

 夢華の瞳が見開かれる。まさか、自分を庇うというのか、そんな思考がめぐる。

「何故、罪人が夢華を庇うのか、理解できないが。まぁいい。ならばともに死ねば、俺としても一石二鳥だしな」
「簡単にいってくれる……」
「そちらこそ、白き断罪第二部隊“陽炎”の隊長の実力をあまり舐めないほうがいい。後で後悔するのはそちらだ」

 自信満々に答える悧智。それだけに篝火は相手の実力が充分にあることを嫌でも理解する。これだけの人数を相手に一人で相手どろうとしていること。仮に夢華一人がターゲットだったとしても態々多人数がいるこの時を狙う必要はない。夢華が人気のない場所で一人でいるところを狙えばいいだけだ。

「篝火、なんで僕の前に?」

 夢華が篝火に問う。何故、敵である自分を庇おうとするか。

「……さぁ。まぁ、ほっとけないし」

 初めて夢華と出会った時も現実と幻想の狭間に存在するような――辺りは現実であるのに、少年だけが非現実敵であるような存在に目を奪われた。放っておくことは出来なかった。何処か別の場所に飛び立ってしまいそうで。

「あの時も、そうだったね」
「あぁ、まぁ“あいつ”には猫じゃないんだからって、怒られたけどな」
「いつか、自然に語れるようになると、いいね」

 あぁとは篝火は頷けなかった。
 大切だと認められなくて、失った大切な相棒のことを、誰かに語れる日がやってくるのか、わからなかったから。

「んーよく、わからないけど、夢華ちゃんは、とりあえず味方でいいのかな」

 篝火の隣に斎が並ぶ。札を何枚か手に握っている。

「夢華は悪いやつじゃない」

 烙も片手に真っ白の刀を握る。白き断罪を抜けたからといって、自分に一番馴染み、ともに戦い抜いてきた相棒を、今さら手放す気にはならなかった。

「まぁ、篝火が味方するなら、悪いやつなわけないだろ」

 両手に郁が真っ黒の刀を持つ。

「……大丈夫なのか?」

 篝火が心配そうに声をかける。昨日の今日だ。傷口が又開いたら、そう思ってしまう。

「強打を受けなければ支障はない」

 郁は篝火の心配を打ち消すように、断言する。
 今までも強い攻撃を受けることは極力避けていた為に、戦いにいたっては、今までとは何も変わりはしない。そうは言わない。余計な心配ごとを増やしたくないから

「んじゃ、俺も手伝うぜ。そこの野郎はいけすかないし」

 最後に朔夜が加勢する。これだけで、六対一だ。
 悧智にとってはかなり不利なのに、それでも余裕の表情を崩さない。
 ただ、泉だけが傍観していた。
 元々、泉の手助けを誰も期待していないだけに、特に何も言わない。


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