零の旋律 | ナノ

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「普通寝たら、もう問題ないだろう」
「そうなのか」
「あぁ」
「まぁ、いいや。俺も途中で眠くなったから、あっちまでいくの面倒だったし、別に問題ないよなぁ郁」

 泉ではなく、郁もほうをみる。

「あぁ、別に問題はないが、何か問題はあるのか? 兄貴」
「いや、もうなんでもないわ」
「そうか?」
「あぁ、さっさとお前ら着替えてこい」

 泉の指示で二人はそれもそうだな、と着替えに向かう。
 泉はベッドの上に座る。さっきまで二人が寝ていた体温が伝わっきて生温かい。

「オイ、篝火。あの世間知らず二人をどうにかしろ」
「いや、どうにかしろって……ってか今さらじゃないのか?」
「まぁ、普段から雑魚寝を皆でしていたら変わらないかって……なんか違う気がするんだが」

 そこで考える泉とは対照的に、篝火は泉の顔をじろじろと見る。

「なんだ、人の顔をじろじろみて気持ち悪い」
「いや、なんだか今日の泉って人間らしいなって思っただけだ」
「人を普段は人外みたいな枠にいれるな」

 心外だといわんばかりの泉に、やはり何処か普段とは違う人間らしさを感じる篝火だった。

 数分後、着替え終わった朔夜が戻ってくる。

「何をはなしてーんだ?」
「ん? いや、泉に世間知らずな二人をどうにかしろっていわれていたところ」

 篝火が正直に答える。

「はぁ? 俺は別に世間知らずじゃねぇよ」
「いや、まぁ朔夜は世間知らずだとは思うけど」
「なんでだよ、篝火」
「なんでもだ」

 所々、不思議に感じる部分が朔夜にあったのは、朔夜がここの生まれであり、王族だったからと次第に納得する篝火。そう思えば、今まで疑問に感じていたことも解決する。例えば、上では常識とされる事の常識を知らなかったり、四大貴族について存在そのものを知らなかったり等上げればきりがない。

「何をしているんだ? 世間知らずがどうこうって聞こえてきたが」

 いつも通り、泉には僅かに及ばないが真っ黒づくめに身を包んだ郁が着替えを終えやってきた。

「もう、お前ら気にしなくていい」

 これ以上、話しても話がややこしくなるだけだから。

「じゃあ、朝ごはんにするか」

 泉が率先して台所へ進む。今日は寝ないで起きているということだ。

「あれ? 俺が作るがいいのか?」

 泉が料理を作るのが珍しいと篝火が声をかける。

「偶にはパン以外も食いたくなるものだろうが」
「って普段お前一緒に行動していないだろうが、まぁいいや。泉の手料理楽しみにしている」

 恐らくスパゲティが出てくるんだろうなと篝火は思いながら。篝火が料理すると高確率でパンになるなら、泉は麺類を作ることが多かった。但し、篝火と違い麺類が大好物というわけでもない。
 因みに斎が作ると和食中心になり、朔夜は創作料理が多くなる。
 そして郁が作ると、人が食べられるものではなくなる。


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