V そして――朝 「…………」 「…………」 「……なぁ」 「……あぁ」 二人の人物は、扉の外側から室内を視る形で、半分ほど固まっていた。 そこには仲よさそうに寝息を立てながら、一つのベッドで一緒に寝ている郁と朔夜がいた。 ご丁寧に、枕も半分こな割合ずつで使っている。器用だ。 その様子を朝朔夜の姿が見えないなぁと思いつつ郁を起こそうとして、篝火が扉を開けた時に発見し、その後ろから偶然泉もやってきて、二人して固まっていたのだった。 「まぁ……世間知らずの坊ちゃんだからいいか」 「やっぱり、泉は朔夜が王族の人間だって知っていたのか」 「あぁ、そりゃ情報屋だからな」 朔夜が王族の人間だと判明した時、あの場に泉はいなかった。 あの後誰かに聞いたとも到底思えなかったが、泉の情報力からして知っていなかった方がおかしいだろうと篝火はたいして驚く事はしなかった。さらに言えば、朔夜に関することで度々泉は謎の事を言っていた。今思い返せばそれは朔夜が王族だったからかと合点がいく。 「……ん?」 そこで篝火は一つの疑問にたどり着く。 「何だ?」 「まぁ、世間知らずの坊ちゃんだからいいか、ってことは、もしあれが朔夜じゃなくて俺だったら泉はどうしていたんだ?」 「あぁ、勿論殺していた」 「……オイ!」 泉なら冗談ではなく本気でやりそうで篝火は背筋に冷や汗が流れる。 「ふわぁー何をしているんだ? ……兄貴と篝火」 二人の会話で目を覚ましたのだろう、低血圧ではない郁が起床する。 そして、上半身を起こし、手を横に置いたところでベッドではない何か固いものがあるのに気がつく。 横に目線を置くと、そこには寝息を立ててまだ起きる気配のない、低血圧の朔夜が気持ちよさそうに寝ていた。 「ん? あぁ朔か。通りで寝ているとき狭いと思った」 「反応それだけかい」 「ん? あぁ、おはよう、を忘れていたな」 何処か的を外す解答に、篝火は苦笑いだ。 「オイ、朔夜起きれ!」 泉が朔夜の元まで近づいて、耳元で大声を出す。 「うるせえぇ!」 朔夜はその音量で目を覚ました。 「篝火。今度から耳元で怒鳴ればいい」 いつもと違いあっさりと起きた朔夜の姿に、今度からそれもいい手だなと考える篝火。 「あー、頭ガンガンする。耳元で怒鳴りやがって。あぁ、皆起きていんのか。はよ」 「あぁ、ってなんでお前はベッドで寝ているんだ?」 「ん? いやだって傍にいってって言われたし」 「……あのなぁ」 王族だからか、罪人の牢獄で過ごしているからか、両親の影響か、何処かずれている朔夜に、軽く泉はため息をつく。 [*前] | [次#] TOP |