零の旋律 | ナノ

第壱話:金の親友


+++ 
 解れた糸は再び結すばれた――もう二度と離さない
 
 斎は階段を駆け上がる。一刻も早く烙に自分が選んだ服を着て欲しかった。
 服屋は閉店時間を過ぎていた為しまっていたが、斎が無理をいって開店させた。その分斎は料金を上乗せして払っていた。

「ただいまー」

 扉を勢いよく開ける

「おかえりー」

 烙の声が最初にあり

「扉は静かに開けろ!」

 次に朔夜の声があがる。篝火と郁は少し遅れておかえりーと声をかける。

「烙、服を買ってきたよ」
「ありがとう」

 紫色の手提げ袋を烙に渡す。

「じゃあ、少し着替えてくるわ」
「うん」

 烙の服の好みは知っているつもりだが、喜んでくれるかなと僅かに斎は気にする。

「まぁ、流石に服くらいは違ったほうがいいのか?」

 朔夜は袋の中身を覗こうとしたが烙に遮られる。

「お楽しみということで?」
「いや、わけわからん」
「洗面台借りるよ」
「何を買ってきたんだよ?」

 仕方ないので朔夜は興味のままに斎に問う。買ってきた本人が何を買ったか知らないはずがないから。

「んー、烙が秘密っていうなら、俺も秘密で」
「ケチくさいな、教えろよ」
「秘密秘密」
「けち」
「心外だなぁ、朔ちゃんよりかは心がひろーいつもりですよー」
「お前のその心の狭さで広いというのなら、もうなんか人間みな善人になるぞ」
「俺がいったのは朔よりは広いっていったから」

 いつもの会話。慣れた会話。烙と再び仲良くなれたといしても、朔夜たちとの関係が消えるわけではない。

「俺の心はかなーり寛大だ」
「んなわけないじゃんよ」
「あぁ!?」

 失うことなく続けばいい

「お待たせ」

 朔夜と斎がいつもの会話を繰り広げていたころ、烙は戻ってきた。

「へ? どちら様ですか」

 思わず声を上げる朔夜

「おや」

 篝火も驚く、郁も斎も同様。

「烙、その髪どうしたの!?」
「切った」

 背中まであったはずの長さの髪が、今では肩より上のショートカットになっていた。薄紫のタートルネックに合わせ黒いローブのような形状のコートを羽織っている。前を止めるボタンの代わりに銀色の鎖がついていた。腰にはホルダがあり、そこに真っ白の刀を収める。今までとは異なった雰囲気の中で金色の瞳だけが烙だと証明しているようだった。
 斎は烙に近づき短くなった漆黒の髪を触る。

「折角綺麗な髪だったのに、勿体ないなぁ」

 烙は黙ったまま、髪の毛を触っている斎の手を離す。
 そして斎に背を向け、二三歩歩き、クルリと斎に向く。


「願掛けは叶ったら切るもんだろ?」

 満面の笑顔で。


- 223 -


[*前] | [次#]

TOP


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -