零の旋律 | ナノ

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 その傍ら、特にやることがなく暇を持て余している面々は、暇つぶしに会話をしていた。

「夢華って卵に目鼻ですね!」

 柚葉が夢華のその容姿に対して言葉をかける。

「へ?」

 夢華は意味がわからずに首をかしげ

「卵に、目と鼻かくの? かかないよ」

 と答える。

「あぁ、そこがまた可愛いですわ!」

 思わず柚葉は夢華に抱きつく。夢華はわけがわからず硬直していた。

「何をやっているんだよ」

 焔は暇つぶしに、夢華に抱きついている柚葉の首根っこを掴んで夢華から離した。
 焔より頭一つ分以上も小さい柚葉はあっさりと上に持ち上げられる。

「あぅー可愛かった、ですよ」
「はいはい。くっつかない、くっつかない」
「何故ですよ?」
「んーなんとなく」
「酷いですよね? それ」

 柚葉の言葉には苦笑して終わらせた焔。
 結局夢華は卵に目鼻の意味がわからずじまいだった。

「(烙様……どちらへいかれたのですの)」

 その会話を傍目に由蘭は一人気分が沈んでいた。何時もなら隣にいて自分に声をかけてくれるはずの烙が何処にもいない。烙を迎えに行った時、由蘭は烙が白き断罪の衣装をベッドの上に丁寧に畳まれていたのを目にした。武器もない。誰かに告げた形跡はない。それらを統計した結果由蘭が導き出したのは烙が白き断罪を出て行ったということ。何処へ向かって何をしにいったかも検討がついている――烙がもう此方に戻ってこないことも。しかし、烙が戻って来てくれるのでは、という希望を心の何処かで捨てきれない。そんな希望を抱きながら、由蘭は斎が罪を犯した後の烙の悲しみを間近で見続けてきた由蘭は再び二人が親友に戻ってくれるならそれでもいいという気持ちもある。
二つの相反する気持ちが由蘭の中で複雑に絡み合う。
 今後斎と烙が敵として目の前に現れたら自分はどうするべきなのか迷う。
 白き断罪として任務を全うするか
 それとも――
 考えても由蘭にはまだ答えは見つからなかった。

「どうしたの?」

 気分が沈んでいる由蘭の前に砌は立ち声をかける

「な、なんでもありませんわ」
「そう? 何もないようには見えないけど」
「……大丈夫です。わたくしは平気です」

 その言葉は砌に対してではなく、自分自身を安心させるための呪文のように砌には聞こえた。

「そう、なら私は何もいうことがないわね」

 由蘭が何もないというのなら、大丈夫だというのなら、無理に聞き出す必要もない。大方の目安もついていた。砌は白圭も烙がいない理由について検討がついているだろう、けれど白圭も何も言わない。何も口にしない。


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