W 食品や日用品などの買い物を続けていると、ふとある店で目が止まる。 「行ってみない?」 斎の声で、四人はその店に足を運ぶ。 罪人の牢獄とは言っても、普通に店はあった。食堂から雑貨店、服屋、玩具屋等様々だ。特に第二の街は支配者が雛罌粟ということもあり、より一層沢山の種類の店が出ている。 その中で四人が足を運んだ店はアクセサリーショップだ。 「そろそろ、何か新調しようかなぁ〜」 種類豊富なアクセサリーを目の前に、斎はショーケースの中を除いていく。斎のみではなく篝火たちも全員ピアス等のアクセサリーを身につけている為、其々眺める。 普段はこんな風に買い物をしに出かける事がなかった朔夜は新鮮な気持ちに満たされていた。自然と楽しくて口元が緩みそうなのを隠しながら、ある所で目が止まる。 「どうしんだい? 朔。何か素敵なものでもあったとか?」 「これなんか良くね?」 朔夜がある一か所を指す。 「確かに、きれーなネックレスじゃん、朔にしては趣味がいい」 「おい。にしてはっていうのはどーいうことだ? 俺は趣味悪くないぞ」 「うん、知っているけど、朔で遊ぶのはタノシイジャないかーサイコー」 「棒読みにするな」 毎度恒例が始まる。その様子を普段見ることがない、店員はどうしようかと、手が辺りを泳いでいた。 「模様は紫蘭か。いいんじゃないか」 ネックレスを眺めていた篝火がそういう。モチーフにされている花紫蘭だった。 「そうだな」 郁もそれに同意する。 「すみません、これ四……五つ下さい」 篝火が、店員に向かって言う。店員は品物が売れたことに喜んで、包装をしてくれた。品物を受け取る時に、篝火が代金を渡す。その額は決して安くはなかったが、篝火が全員分を買ったことに後悔はなかった。しかし、それと同時に値段を見ないで購入したことは失敗したなと篝火は感じていた。 普段の収入は榴華の仕事を手伝うことで得ていたため、白き断罪がいる現在、榴華から仕事の手伝いを依頼されてはいなかった。暫くの間パンを買うのを控えるか、朔夜にでも買わせるかと今後の食費について考えていた。 「紫蘭のネックレスをお揃いで買ってみた」 個別に包装されているそれを一人一人に渡す。 「何々〜篝火の奢り奢り?」 「たまには、いいだろう?」 「そうだね、記念品のお揃いってことで」 店の外に出た後、斎は包装を開けて、出てきた銀色の紫蘭の装飾が施されたネックレスを身につける。 「似合う?」 「さぁ」 「ひどっ」 斎に続き、朔夜と篝火もネックレスを付ける。元々水色のチョーカーを付けていた篝火は、少しごちゃっとした感じになったが、特に気になるほどでもなかった。 一方の郁は、銀色のネックレスに、暫くの間つけるか悩んでいたが、やがて箱を開けネックレスを付けた。 「どうだ?」 「偶には、黒以外もいいんじゃね、似合っているし」 朔夜の言葉に、郁は少しだけ表情を複雑にしたが、すぐに戻る。 「普段は黒ばかりだからな」 「まぁお前より泉の方が真っ黒だけどな」 「確かにな」 ふふ、と笑いあう――自然と笑みがこぼれる空間だった。 残る一つのネックレスを、篝火は上着のポケットしまう。 ――渡せるかな あの他人には決して心を開かない相手に。 その後暫く買い物を楽しんだ後帰宅する。おそろいのネックレスをつけて。 [*前] | [次#] TOP |