零の旋律 | ナノ

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「人手は少しでも多い方がいいだろう。手伝ってこい」
「むーじゃあいいですけど。でもあたしたち後始末処理班じゃないですよ」
「じゃあ始末書処理班」
「どっちも嫌ですよーたいちょーの意地悪」
「そうですよ隊長。それに意味もおかしいですし」

 抗議の声を上げるが、悧智は受け入れるつもりはない。

「毎度後始末が大変なことばかりするから、残業させられて処理をしなければいけなくなる二人組だから、後始末処理班。または、毎度始末書を大量に書くはめになるから、始末書処理班だろ?」
「だから、意味がおかしいんですけど」

 なおも抗議するが、悲しくもそれは受け入れられない。

「じゃあ頑張れ、柚葉(ゆうは)、悠真(ゆうしん)」
「諦めも肝心ですね。じゃあ、頑張りますですか! 始末書処理班れっつごー」

 柚葉と呼ばれた少女は、薄茶色の髪をツインテールにして、先端だけ縦巻きにしている。瞳の色は桃色。白き断罪の特徴でもある、白い服に身を包み服の下部分にはフリルが見える。キュロットをはき、ニーソックスとブーツをはいていた。左手に槍をぶら下げている。

「だから、それは意味が違うから」

 半ばあきれ顔で――そしていつものこととため息一つで終わらせたのが悠真(ゆうしん)。
 薄紫色の髪は短くボブカットで切りそろえられている。瞳の色は髪より深い紫。悠はと同じく白い服を着、中には黒いハイネックで合わせている。腰に備えつけられているホルダーの中には剣。

「ではでは知っている方もいるでしょーが、いちおー親愛の証として自己紹介しますですね。あたしは柚葉(ゆうは)白き断罪第二部隊陽炎所属。歳は十九歳ですよ」
「俺は、同じく白き断罪第二部隊陽炎所属、悠真(ゆうしん)。柚葉のお守約。ってストッパー?」
「なんでよーあたしがいつ、悠真に迷惑かけたのよっ」
「数えてないぐらい。数えてもいいけど一日じゃ足りない」

 二人の存在を知っている者はまた始まったよという目で見、知らない者は二人はそう言った関係かと見ていた。
 その場を静かに立ち去ろうと悧智は踵を翻した時柚葉が気がつく。

「ちょ、たいちょーはまさか人任せにしてあたしらだけを置いていくつもりですか?」
「うん」
「あっさり言わないで、くださいですよ。たいちょーも、残ってくださいよ。あたしらだけ、始末書とか嫌ですよ」

 柚葉は両手を腰に当てて頬を膨らます。

「俺は色々と仕事が忙しい」
「嘘言わないでくださいですよ? 多岐多端するようなことなかったじゃないですか、部下に全部おしつけるんですから」
「俺を非道な隊長見たいな風に言うな」
「事実無根ですよ」
「俺も隊長が残ってくれた方が有難いんですけど」

 柚葉に続いて悠真も加わる。

「じー」

 柚葉は効果音をつけながら悧智を見つめる。

「……わかったよ。白圭いいな?」

 柚葉の粘り強さと視線に悧智は観念し、白圭の方に向き確認をとる。

「問題はない。戦力が増えるのは此方としても有難いさ」
「なら知っているだろうが俺は悧智(りさと)。陽炎の隊長だ」
「追加で、たいちょーは腹黒い悪魔みたいな性格をした残忍冷酷で残忍非道で、残忍薄行で人を蹴落とすのが得意な人ですよ!」
「さらに追加。隊長は術者なのに、人を倒す感覚があった方がいいって、近距離で戦うエゲツナイ人です」

 悧智の自己紹介に、部下の二人から追加説明が加わる。

「お前らは本当に俺の部下か? 人を犯罪者見たいな説明の仕方をするな」
「事実の隠ぺいはいけませんですよ?」

 白き断罪に個性的な協力者が増えた。

「まっあたしらは死ぬつもりはないからその辺宜しくですよ?」
「手伝う以上は全力を尽くすよ」

 思わぬ助力を得たが、それがが吉と出るか、凶と出るかはまだわからない。


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