第四話:異変 第二の街に戻ってきた時、それは感じられた。異変を肌で感じる。 急いで中心部の方へ向かえばその原因が嫌でも判明する。 夜中なのに想像しい街。噴水がある広場では水ではなく、あちらこちらから血が噴き出る。 人と人が争っていた。 白き断罪ではない。 罪人達の争いごと。 第一の街の罪人と第二の街の罪人の――それが第二の街以外で行われたのなら日常的だと、誰も気に留めなかったかもしれない。けれど此処は違う。 雛罌粟が支配者を務める第二の街。 「お主ら一体何をしておる!」 雛罌粟は地面に倒れている罪人の元へ歩み寄る。呼吸が弱弱しい。酷い怪我を負っている。雛罌粟にとって、その顔は見覚えのある顔だった。 「何事じゃ」 「この街には、あぐっ……この街の……しょ、食糧しかっありません。だ、だから……乱闘がっ」 それっきり罪人は言葉を発することがなかった。 優しく地面へ置き雛罌粟は立ち上がる。 「些細なことで揺れおって、馬鹿ものどもが」 扇子を取り出す。 「些細なことって、重要問題だろう」 実際問題、食糧が底を尽きれば死ぬ。食事を必要としているかすら危うい銀髪を除けば。 「我がそのような事、何も対策を講じていないわけがなかろうに。だからこそ我は第一の街の罪人を受け入れたのだ。それを……早とちりした馬鹿どもが勝手に暴れおって……その方が、命を奪っているのではないか」 雛罌粟は、怪我人がいる場所を中心に結界を張り始める。 「お主ら、馬鹿どもの鎮静を手伝って貰おうか」 雛罌粟は、そこいらの罪人では相手にならない実力を保有している篝火たちに頼む。 口調的には命令だったが、それは同時にお願いでもあった。 「あぁ」 雛罌粟は別段罪人を大切に思っているわけでもない。唯、唯―― 「お主ら、馬鹿どもを片っ端から殺さぬよう倒してもらおうか」 篝火が止めに入ろうと行動を起こそうとした時、他の罪人が篝火の存在に気がつき、剣を握り締め襲いかかってくる。篝火が反応するよりも早く、後方から弓矢が降ってきた。 正確無比に相手の心臓を貫き一撃で絶命させる。 驚いて後方を見ると、そこには不真面目で自称を多様する戯遊が弓を構え、矢を握っている手で手を振っていた。 「はろーん」 状況に似つかわしくないのんびりとした声だ。 罪人と朔夜の間に立ち入るように珀露は現れる。そして両手を広げ回転する――長い袖が遠心力を持ち、流れに逆らうことなく漂い罪人に命中する。袖の中に重りを仕込んでいる為、罪人に当たった途端鈍い音を奏でる。 「へぇ、戦えたんだ」 術者ではあるが、戦闘に関して詳しい知識がない朔夜は戦えたことに感心する。しかし知識があるものはその戦いを無言で睨む。 「殺す必要はなかったでしょ」 斎が腹部を手で押さえながら戯遊を睨む。殺す必要のない場面。 「何を言っているのかしら? 斎ちゃんだって殺すでしょ? 敵は。私たちもそれをしただけのことよ」 理解出来ないと戯遊は首を傾げる。その動作をしながらも、弓を放ち的確に罪人の心臓を貫く。 「……そりゃ殺すよ。でも今この場面で殺す必要はないだろ」 「一撃で殺して上げているだけいいと思って欲しいところだけど」 「彼らは」 言葉を最後まで言わせない。 [*前] | [次#] TOP |