零の旋律 | ナノ

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「銀髪が、この地の支配者となっているのは此処があるからか?」

 沈黙しないように郁は言葉を紡ぐ。

「君も本来なら銀色と呼ぶべき人なんだろうけど、まぁ拘るつもりはないし銀髪でいいか。そうこの大地があるから。この場所があるから――この地に留まり続けている。此処は、いや……これはいいか。もう一つ君には教えてあげよう。貴族、そして王家、一部の政府の人間は其々、その時の過去の功績があるからこそ確固たる地位が約束されているんだ」
「そして、秘密は決して口外されない」

 入口から聞きなれた声が響く。
 郁は勿論のこと篝火たちも驚いて視線を銀髪から入口へ移す。
 ただ、予め此処に来ることが分かっていたかのように銀髪だけが驚く素振りを見せない。

「此処には特殊な結界があるはずなんだけどな、泉君」

 姿を現すのは泉。幻想的な空間で、ただそこが現実だと示すように――黒い。

「特殊な結界である以上“俺ら”には関係ないはずだ。四……いや、七大貴族は消された歴史の真実を受け継ぎ、そしてこの地は永久の場所として保管され続ける。現存する貴族は嘗ての功績により地位を保証された存在。深紅・白銀・水碧・漆黒・黄華・翡翠・紫翠はその貴族の上に立つ存在」

 語る。語る。伝承を語り紡ぐかのように。

「どういうことだ?」

 朔夜が口を挟む。泉の言葉を理解出来そうで出来なかったからだ。

「四大貴族ってのはきいたけど、七大貴族ってのはなんだよ」
「王家と、特殊な二家を含んだのが七大貴族だ。普段は王家と特殊な二家は省かれ四大貴族という名称でよばれる。白銀一族は暗殺を得意とし闇に生きる一族。水碧一族は真実を記録として残す一族、王家はそのままだ。因みに漆黒、黄華、翡翠、紫翠は四大貴族の別名な」
「……ってか、おかしいだろ、いい加減」
「何がだ?」

 いい加減におかしすぎる
 ――何故そんなことを知っている
 ――何故最初から全てを知っていたように話す

「何で泉はそんなに事情に詳しいんだよ!」

 朔夜の叫びに、篝火と斎そして雛罌粟は頷く。どうしたらそこまで詳しくなれる。

「まっさか、泉は情報を得意とする玖城の人?」

 斎が冗談半分で問う。
 それならば、合点がいく。

「情報屋だ、それぐらいの情報は掌握している」

 質問には半分だけ答える。

「でも、俺、政府直属の組織“白き断罪”に所属していたのに、それより詳しすぎるってのもどうかと思うけど」

 斎はさらに問い詰める。

「白き断罪に全てを政府が話すわけなのだろう、第一白き断罪で政府から一番暑い信頼を受けているのは、第二部隊“陽炎”の隊長悧智(りさと)だろう。一時期姿を消していた白圭ではない」

 斎はそれすら事実であることに言葉を詰まらせる。
 一体全体、この男は一体何を掌握し、何を知らざるか。
 何を理解し、何を求めないか。
 予想が全く出来ない。

「まぁ俺が何もので誰であろうが、お前らに関係ないしな」

 最後には切り捨てられる。
 どんなに長く一緒の時を過ごしたとしても、永久に埋まることのないだろう溝が、泉の前にある。
 恐らく、その溝を埋め泉の前にたどり着いているのは、血縁である郁と親友と郁が言っていた、律だけなのだろう、そう認識する。
 どんなに近づこうとしても、どんなに近づいても、溝は埋まらない。
 唯、狭き空間と、永き孤独を感じるだけ


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