零の旋律 | ナノ

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「そういや、朔夜誘拐未遂されそうだったけど、これからも危ないんじゃない?」

 斎が言った言葉に朔夜ははっと顔を上げる。
 冗談ではなかった、敵である白き断罪に誘拐されるなど。

「どうして、俺を欲しがる?」

 それに理由がわからなかった。

「何か自意識過剰っぽい台詞だけどまぁいいか。多分だけどね、白き断罪がしたいのは破滅じゃない更生。腐敗した政府を正す事が白圭の目的の一部。例え本来の目的が大切な人を殺された復讐だとしても。だから王族である朔夜を殺す必要もない。まして白圭が恨んでいるのは罪人であり、罪人でない朔夜を殺す必要はないのさ」
「確かに、俺は此処で生まれ育っている以上、正式には罪人ではないのかもしれないが、此処で生まれている以上俺は罪を犯しているぞ」
「でも、それをしなければ朔夜は死んでいた」

 淡々と事実を推測して告げる。

「……まぁ」
「朔夜は喧嘩っ早い性格しているけどさ、無差別連続殺人や、殺戮を好む性格じゃないんだからね。梓のように狂気じみていたら白圭も誘拐しようなんて考えはそもそも生まれないだろうけど」
「……」
「それに自然がなく光も闇もないこんな空間より、外の世界の方がいいに決まっているしね」

 斎の言葉に其々頷く――銀髪以外。
 結局、どんなに人が暮らせる場所であっても、此処が腐敗した大地であることに変わりはない。
 一歩街の外に出れば結界から出ることになり、長時間人体が浴び続けると毒になる砂がある。街の外では作物も、何も育たない。ただ死を待つだけの大地。
 そんな場所より、国の中のほうがいいに決まっていると。
 そこは太陽がめぐり、月が闇夜を照らし、夕焼けが辺りを赤く染め上げ
 澄んだ水、大地。辺りを生い茂る木々が存在している。

「……最果ての街の深層にいってみるかい?」

 そこに銀髪が口を開く。神妙な面持ちは、聊か不思議だった。


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