零の旋律 | ナノ

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 誰かのために生きたくて
 結局は自分のためだけに生きた


 第二の街雛罌粟の自宅に彼らは集まっていた。
 白き断罪が撤退したのち、銀髪は雛罌粟の自宅へいくように促した。
 三人掛けのソファ―には、雛罌粟、榴華、銀髪が座り向かい側には斎、郁、朔夜が座っていた。
 篝火、蘭舞、凛舞はそのまわりに立っていた。

「あ、姉様、俺らは自室に戻ってからまた来ますわ」

 双子は同時に口を開く。

「いや、よいお主らは着替えたら、外の街の様子を頼む」
「わかりました、姉様、それじゃあ、御先失礼します、我らが主よ」

 誰に向けてか、二人はお辞儀をした後、扉を開けてその場から出ていく。

「三人用だけど、詰めたら座れるから篝火も座りなよ」

 斎は端による。そして、郁も斎ほうにつめ、一人分のスペースを作っていく。朔夜も郁の方により、窮屈だが、後一人座れる場所を確保する。

「さんきゅ」

 篝火が座ったことでさらに窮屈になるが、座れないことはなかった。
 正し、斎だけは痛みを我慢しているような表情に変わったが、ここでやっぱりいいよと、篝火が断っても、大丈夫だよと座らせようとする、そう思っているから、その表情に気づいても誰も何も言わない。

「で、銀髪何の話?」

 篝火が最初に口を開く。

「君たちが俺に聞きたいことが色々あると思ったから」

 色々な事実が判明した以上、聞きたいことは山ほどあった。そのどれもを罪人の牢獄支配者は知っている。

「……律にぃが朔夜のことを話している時は、それ以上話すなと、止めていなかったか?」

 冷静に銀髪の言動を非難する郁に、そこにまず飛びついてくる? と銀髪は顔をしかめる。

「あれに色々話されたら困るから、止めて貰っただけだよ。それにさ、郁だってあのまま律が喋るより俺から聞いた方が“都合”がいいんじゃないのか?」
「……」
「あれは相当に性格が悪いからな」
「律にぃと知り合いなのか?」

 あれと称し、律の事を詳しい口ぶりに郁は疑問を抱く。

「いや、知り合いではないよ? 存在をお互いに知っているだけ」
「……」

 これ以上は追及したところで何も答えないと判断し口を閉じる。

「なぁピンク帽子が泉の親友だというのは郁が説明してくれたけど、なんでそんなやつが白き断罪にいるんだ?」

 朔夜はあの時聞けなかった疑問を問う。親友ならば態々敵対関係になる相手につくのだろうかと。それとも知らなかったのか――それとも、様々な疑問が朔夜の頭の中を飛び交う。

「それは私たちが此方へ来たことに起因している」
「何故だ? 恨んでいる素振りはなかったが……といか懐かしんでいたっぽいが」
「律にぃの恨んでいる対象が違うからだ」
「はい?」
「律にぃは……いや、なんでもない」

 郁は口を閉じる。これ以上は話せない。話すことを、あの時泉が望んではいなかった。
 それに話したところで、原因となった過去は変えられない。

「まぁ、言及するつもりはないけど、敵なら殺されたって問題ないよな?」

 朔夜は確認する。確認しておく必要があったからだ。

「私らの知り合いだとしても……敵であると認識された以上はな」

 但し律を万が一にでも殺したら泉がその時、その瞬間敵になることは言わない。二人は親友同士、敵同士にはならない。しかしそれを言ったところで意味はない。
 誰も泉が完璧な味方だと思っていないから。


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