零の旋律 | ナノ

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 雛罌粟と榴華、それに蘭舞と凛舞は銀髪のもとへ歩み寄る。

「サクリンが危険だったから、ぎんぱつっつんは此処にきたん?」

 榴華が腕を組みながら飄々と尋ねる。

「まぁそれだけじゃないけどね」

 何処か曖昧に答える銀髪に雛罌粟は合点がいく。

「成程、律とかいう輩とも会話をする為、じゃったというわけか?」
「まぁね。勿論朔夜を助ける目的とこれ以上余計な事を喋られない為、という目的が優先だけど、律と会話出来るならそれに越したこともない」
「……あの男は何者じゃ?」
「ただの死霊使いだよ」
「――。なんじゃと?」

 雛罌粟は一瞬息をのむ。

「なんやねん、自分には全く理解できんよー」
「榴華にはちょっと無理かもね」
「なんやそれ、酷いやん、自分を馬鹿みたいに扱うんやないよ。ま、自分やってくるん遅いよ」
「まぁ。こちらと色々あるもので」

 何かをしていたわけではない、唯このまま物語が進むのが好ましくない
 唯、それだけだった。
 だから、あの場に姿を現し、自分の存在を見せ付けた。
 そうすれば、賢いあの男は手を引くだろうとしっていたから。
 仲間を大切に思う以上、仲間を人質に取られたのならば


 遠くで事の成り行きを傍観していた、戯遊と珀露だったが、これ以上何も起きないなと判断して、静かに姿を消した。

「まさか罪人の牢獄支配者が出てくるとは思わなかったわ」
「……」
「でも、それにしても本当に危険パレードって所よね。それに収穫も無きにしも非ず」
「……」
「あぁもう返事くらい……せめて相槌くらしてくれてもいいじゃないのよ」

 何時ものやりとりをしながら。


+++

 白き断罪の拠点、そこの一室に二人の影がある。

「きっともうすぐ白圭たちが戻ってくるよ」

 白き断罪の名に相応しい程に、これ以上の白はないと思える程の少年――夢華(むか)とベッドにうつぶせになり伏せている烙(らく)がいた。

「烙……」

 夢華はベッドの傍に寄りかかり烙に話しかける。

「烙は何を気がついてしまった?」
「……気がついたら、戦えるわけないじゃないか」
「なら、気がつかない方が良かった?」
「そんなわけない! でも、だからってどうすりゃいいんだよ」

 失ったときの喪失感が余りにも大きすぎて、裏切られたと絶望した。
 でも――それが裏切ったわけではない、自分を守る為にやったことなら
 そして、自分を傷つけないために、その真相から口を閉ざし
 黙秘を続けたというのなら
 自分は何のために此処にいる
 自分はこれから何が出来る。親友と戦うことなんて出来ない。傷つけることなんて出来ない。シタクナイ。

「友達と親友と……相棒と戦えるわけないだろ?」

 絡の言葉に夢華は口を閉ざす。何かを言うべきではないから
 例え何かを言ったとしても、今それが絡の言葉に届くのだろうか――疑問が過る。

「なぁ、夢華、夢華なら……戦えるか? 親友と」

 絡の言葉に夢華は黙る。その理由は悩んでいるからではない。

「僕は……僕には大切な従兄弟がいる。けれど僕に親友と呼べるほどの存在はいないよ」

 大切な言葉は何も教えられてない
 教えられたことは――

「そうか……」

 絡は再び黙り込む。
 夢華の顔は見たくなかった。見てしまえば、全てを見透かされてしまいそうで怖いから。
 だから、ベッドに伏せている。顔を、表情を悟られないように。


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