W 「何故、深紅の宝玉がっ……」 「何それ?」 「……」 追及されても、郁の口からは言葉が出てこない。信じられないから、けれどそれは見間違うはずもなく深紅の宝玉。 代わりに、その疑問に答えたのは砌だった。 「深紅の玉石の意味はね、王族よ」 「!?」 先ほど以上の驚愕が、彼彼女らを襲う。 「王族だと!?」 「えぇ、そうよ。王家には王家の血族だと一目でわかるように、深紅の宝玉を生まれながらにして身体の何処かにあるの。それとね、稀有な光属性の術を扱える一族でもあるのよ」 「しかし、王家には子供はいないと俺は聞いていたぞ」 榴華が砌に問う。子供がいた処で何故――此処にいる。説明がつかない。 「えぇ、第一王位継承者が、騎士の一族の令嬢と駆け落ちしちゃったからいなくなったのよね。でも――ほら、可能性があるじゃな」 砌は薄笑いする。 「……つまり、その駆け落ちした二人の間に生まれた子が朔夜というわけか?」 「えぇ、そういうことなるわ。というかそれ以外説明のつきようがないんだけどね……まぁ、そこの真っ黒な刀使いが知っているのには驚きだけどね」 砌は郁の方を向いてにこやかにほほ笑む。 郁に悪寒が走る。 ――勘付かれている 「まぁ、想像がつかないわけではないのだけれどもね。何かしら? 第一の街支配者さん」 榴華がじっと砌の方を見ていた為、視線を榴華へ移す。 「あぁ。王族の隠し子ってことならまだ納得が出来る問題だが、問題はその隠し子である朔夜が牢獄にいるんだ? 説明がつかないだろう」 「それはたぶ――」 「砌避けろ!」 白圭の言葉とほぼ同時に砌は立ち上がり白圭の元までメイスを両手に後方に飛ぶ。 朔夜はすぐに立ち上がることは出来ずに身体を起こすにとどまる。 銀色の渦が朔夜の周りを渦巻く。それは竜巻のように、朔夜の前を中心に渦巻くと、やがて、銀の粉を散らしながら治まる。一種の幻想的雰囲気の中から現れるのは―― 「罪人の支配者」 罪人の牢獄、支配者通称銀髪だった。 [*前] | [次#] TOP |