V 「どういことだ? 朔夜は罪人じゃなかった、ということか?」 事の成り行きを見ていた榴華は声を上げる。普段のサクリン呼びではない。真面目な場面では名前で呼ぶ。篝火も、斎も、郁も驚きの余り言葉を失っていた。知らなかった。 「罪人ではないなら烙印がなくて当たり前だけど。此処で罪人の証がないのも……おかしな話よね?」 「……砌、確認を」 由蘭の隣に白圭は並び、砌にさらなることを指示する。砌は無言で了承した。 「……榴華、朔夜は何時からこの牢獄に?」 斎は自分より長い間罪人の牢獄にいる榴華に問う。 「俺が来たときには既にいた。つまり四、五年前からは少なくともいたことになるな」 「十四、五か」 「あぁ。だから俺も何時から朔夜がこの牢獄にいたのか知らない」 最初からいた。自分たちが罪人の牢獄に堕とされた時から、朔夜は既に。 「失礼するわ」 砌は何かを探すように朔夜の身体を触っていく。 「うわっ止めろって、く、くすぐってぇ!」 朔夜の静止空しく砌はペタペタと触っていく。 首もとを触っていた時だ。砌は何かの違和感に気付く。 「ん?」 長い髪の毛を横にずらす。左耳に開けられた二か所の赤いピアスと耳より少し斜め下に赤いピアスとは違う赤い何かがあった。 「……ビンゴかしら」 「……」 朔夜は逃げようと動くが、朔夜の上に乗っている砌からは逃れられなかった。 「赤い……宝石?」 斎が首を傾げる。 「ピアスじゃないのか?」 篝火も首を傾げる。それと同様に普段隠されていた赤い何かに、榴華も首を傾げる。 別に唯のピアス、といってしまえばそれで終わりと思える物。しかし場所が場所であり、さらに砌がピアスを探すとは到底思えない。だからこそ、それには何か意味があると確信させる。 砌は取れるのだろうか、と触り引っ張るが皮と一緒に少し伸びるだけで赤いそれ自体は取れない。 白圭はまさかそうとは思えずに驚愕している。嘘だと、偽りだと偽物だと――思いこみたくて。 由蘭と焔は、篝火たち同様に首をかしげ、律は興味深そうにそれを見ている。 そして―― 「ま、まさか……冗談……だろ?」 郁が信じられないと首を振る。 「郁は知っているの?」 当然わからない斎は問う。 「あ、あれは……深紅の宝玉」 ――それは、他人に知られてはいけないものよ 厳しくあり、そして優しく包み込んでくれた 自分のために [*前] | [次#] TOP |