零の旋律 | ナノ

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『壊れた枠の中で、正してくれた』

「想思を、私……は、また大切な仲間を守れなかったっ」
「っ……」

 白圭の篝火を掴む手の力が強くなり、篝火は息苦しさと圧迫感を感じる。
 白圭が壁に叩きつけたまま、篝火を持ち上げる形にしているため、足が地についていない。
 郁は手首を握られたまま、どうすることもできなかった。
 右手首は、とっさに刀を手放してしまって、手元にはない。左手には刀を所持しているが、白圭と背中合わせのような状態になっている。
 攻撃ができなくはないが、郁が攻撃をするよりも早く、白圭が次の行動にうつれるだろうと、考え実行できないでいた。

「想思を殺した……貴様を私は許さない」

 さらに力が強くなる。
 意識が混濁してきた。視界がかすむ。

「篝火!!」
「篝火っ」

 斎は何かをしようとしたが、動こうとした身体に痛みが走る。
 完治していない身体を無理に動かした結果。

「ぐっ……」

 思わず片膝をつく。

「てめぇ、篝火に何をするっ!」

 声を荒げる朔夜。

「何をとだと? もともと私らと貴様らは敵対どうし、殺すだけだ」

 白圭の殺気に思わず怯みそうになるが、ぐっと押し堪え白圭を睨み返す。

「想思を殺したんだ……殺してやるさ」
「篝火っ」

 ――死ぬな
 覚悟なんて、当の昔に終わっている。
 事実は変わらないし、事実を否定する気もないし
 後悔したこともない

「ふざんけんじゃねぇ」

 朔夜の周辺に光のが出現する。意思があるように各々が光線となり白圭の元へ変幻自在に向かっていく。

「さ、させませんわ……」

 由蘭が慌てて結界術を唱えるが、意図も簡単に通過していく。まるで最初から結界が存在しなかったように。障害物を障害物と認識せずに。光線は白圭の元へ向かう。眩い光線が白圭の視界に映る――。

「ちっ」

 篝火の首を掴んだまま白圭は光線から逃れようと移動する。
 ――呼吸が苦しい。
 郁を掴んでいた手を自由にする。動けるようになった郁はその場からバックステップを踏み斎達の元へ戻る。

「篝火を離せ!」

 光線は執拗に白圭をつけ回す。それは今まで朔夜が見せていた上空から雷を落とすだけの術とは一線を画している。縦横無尽に駆け巡る光。

「光属性の術……」

 間近で見ている斎は思わず呟く。

「光属性の術……ウソですわよね?」

 思わず斎に問いかけるように、由蘭は言葉を発したあと、あっと口を塞ぐ。


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