]T 「靡き風が吹き荒れる中で」 由蘭は新たな術を唱える。 どれもこれも、認めてもらいたくて、実力を認めてもらいたくて、習得した。 様々な術系統を扱えるように。苦手がないように満遍なく学習した。 ――認めて下さい 切実な心の叫び。 斎は朔夜の隣に並び、郁の方へ一枚の札を投げつける。そして郁に届きそうな頃合いを見計らって上空にも札を投げる、二つの札が由蘭の術から身を守る結界術として作用する。不可視の壁が包み込み、由蘭の攻撃を届かなくする。雛罌粟のそれとは違い、あらかじめ仕込んであるために、長い時間の演唱も準備も必要ない結界術。しかし、その強度はなかなかのものを誇る。 由蘭の術を完璧に消し去る。消えると同時に、由蘭の攻撃から守っていた術は、効力をなくし札は消えていく。 郁は由蘭に向かって切りかかろうとするが、由蘭の作り上げた物体がいく手を阻む。 斎が数体ずつ結界の中に閉じ込め、中から術を発動させ、由蘭の術を消し去っていく。 しかし由蘭は何一つ諦めることなく物体を作り上げ彼らへの攻撃を試みる。 油断する隙など一切なく、隙あらば、隙なくとも頭上から朔夜の雷が落下してくる。 一定の法則性があり変則的な動きをしない雷は由蘭にとって対処しやすいものではあったが、威力は高く一撃でも当たればあの時の二の舞になる。由蘭は交わしにくいのは本を上へ半円を描く。結界術が即効で展開され雷を阻む。 その時、白き断罪第三部隊隊長白圭(はくけい)が現れる、何処か近くの建物で成りゆきを見守っていたのだろう。白圭の帯刀する大剣が地面に突き刺さり煉瓦に罅が入る 「ぞろぞろ、ぞろぞろ増えるねぇ」 体調が万全ではないのに、斎は笑う。札を構えながら、由蘭の術を分析する。 「(本当に上達しているよな)」 由蘭が使う術は何処か懐かしく思えて――。 [*前] | [次#] TOP |