零の旋律 | ナノ

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 下らないことで笑って、他愛のない会話をして楽しんだ日々は、生きているこそ出来ることで、死んでしまってはそこからさきは、もう二度とできなくなる。
 それは思い出となり、過去の産物として記憶に残るだけ。

 それだけはしたくない。
 それだけにはなりたくない。


「わたくしは手加減を致しませんわ。わたくしにとっては……貴方がたは」

 青い光を帯びていた本は緑色の光へ変化していく。

「さぁ、おゆきなさい、わたくしの術の結晶」

 失った者がでかくて、目の前にいたら憎悪をぶつけたとしても
 失った者が生きている、その安堵は大きい


+++

 回顧する
 懐古する
 戻ってきて、帰ってきて何処にも行かないでと懇願する

「君が生きていて何が幸せになる、君が生きていて誰が幸せになる? 君は周りを全て巻き込んで、不幸の種をまき散らしているだけじゃないか」

 ――そんなことを俺に言うな
 彼は心の中で叫ぶ、悲痛な顔は今にも泣き出してしまいそうに。けれども、彼を糾弾する声はやまない。
 徐々にその声は強くなる。
 己を呪っても足りない中で、無力な自分を嘆く

「勝手にそんなことを決めつけないでよね? 誰だって生まれは選べない、生まれながらの外見も選べない、なのになんでお前はそれを差別する」

 彼を糾弾する声は途中で止まる。
 豆鉄砲を食らったような表情に、糾弾者はなる。
 まさか、彼の味方をするような存在がいるなんて、思いもしなかったからだ。

「しかし、忌み嫌われの瞳だ、この男はお前も、この男の味方をするなら同類になるぞ?」
「はぁ? くだらねぇ……もし、てめぇがその眼を持ち生まれてきていたら、てめぇはどうするってんだ、っていってもどうせ理解は出来ないんだろうね、いや、低俗なあんた程度に理解されたくもないか、いくよ、こんなやからに時間をとられる必要はないよ」

 そういって彼の手を取り歩く。
 しっかりを握って、決してその手がほどけることがないように。

 それが、どんなにうれしかったか
 それが、どんなにシアワセだったか
 それが、どんなに至福だったか

 ――君は覚えている?


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