Y 「蘭凛兄さん! 罪を犯しただけじゃなくて生き伸びていたとは恥知らず」 舞は雛罌粟からターゲットを変えて、リングを回し遠心力をつけて二人目がけて投げる。 「我が可愛い弟よ、まさか白き断罪に所属していただなんてな」 蘭舞も凛舞も、攻撃を喰らうことなく余裕に交わす。 「可愛い弟よ、しかし姉様の邪魔をするなら、ただでは済まないよ」 「勝手に罪を犯して、家名に泥を塗った愚か者に、可愛いなど云われるつもりはない!」 一気に喋りつくすと、ブーメランのように戻ってきたリングを掴む。 遠心力でバランスを崩すことも何もなく、その手にしっかりとリングは治まった。恨みで憎しみで怒りで、我を忘れそうになる。 「なんじゃ、蘭凛。お主らの血縁か」 会話の成り行きを見ていた、雛罌粟は口を挟む。蘭凛と舞を交互に比べ、兄弟と言われれば成程似ていると納得する。 「実弟ですよ姉様。まぁ見ての通りやんちゃ坊主で俺らは嫌われていますが」 「煉舞(れんまい)は俺らが嫌いなんですよ」 「しかし実弟だからといって手加減をするような真似、お主らはせぬよな?」 裏切る。なんて露ほども思っていない。雛罌粟は蘭凛に信頼を置いている。 「勿論、姉様を裏切るつもりは毛頭ございませんよ」 再び、蘭舞と凛舞は煙草を取り出し、お互いに火をつけ合う。 「唯、心配があるとしたら、この中途半端な時刻かな、姉様の御蔭で今はこの姿で入れますけど、多分、暫くしたら戻っちゃいますよ」 「それまでに片付ければ問題あるまい」 「その通りですね、姉様」 二対一は突然終わりを迎え、新たに蘭舞と凛舞が加わる。 +++ 由蘭の作りだす無数の影の物体に朔夜と郁は苦戦する。砕いても砕いてもそれは消えることなく再生されるからだ。ただ体力だけが消耗していく。 「そういや……斎のいる建物にはまだ被害は及んでいないよな?」 一瞬だけ郁は後方に下がり朔夜に耳打ちする。朔夜は斎のいる建物を見るがまだ被害は受けていない。あのまま狭い裏路地でやっていれば既に被害が出ていただろう。幸いというべきか、此処は広い大通り。 「あぁ、大丈夫だ」 重傷といっても過言でない斎を戦いに巻き込みたくなかった。斎の力があれば有利に進むことがわかっていても、失いたくないから。仲間を、ただそれだけ。 [*前] | [次#] TOP |