零の旋律 | ナノ

U


 ――解明される、赤に輝き秘密

「また、やっかいなカラフル術かよっ」

 朔夜は舌打ちをする。由蘭と戦うのは二度目。同じ遠距離タイプの術者で遠距離の術を扱う。朔夜と違うのは由蘭は多彩なバリエーションを持った術を連発すること。それが朔夜にとっては面倒で仕方なかった。しかし前回とは違う。今は隣に郁がいる。一人ではない。

「郁、いくか」
「あぁ、そうだな」

 普段は篝火と一緒に戦うことの多い朔夜だが勿論郁とも戦える。朔夜も郁の実力を信頼しているし、郁も朔夜の実力を信頼している。

「あの女男の術は面倒だ……片っ端から相殺しろ」
「簡単にさらりと大変なことをいうんじゃねぇよ、まぁやってやるか」

 共に倒すべき相手は一人。
 他の相手は他のものに任せる。
 周りを気にかけて、為すべきことを為さないつもりはない。
 
 ――必要とあらば、光を召喚しよう


 ゆらりゆらめく煙
 流れる流れろ同一に

 雛罌粟は砌と相対していた。そこに後方から巨大なリングが飛んでくる。チャクラムを遥かに超える大きさで、それは雛罌粟の身長と同等の大きさがある。雛罌粟は簡易結界を即座に作り上げリングを弾き返す。弾かれたリングはあらぬ方向にはいかず、戻り、そのリングを器用に片手で受け取る人物が現れる。リングが回転を殺しきれずその人物の片手が回転をゆっくりと押しころす。
 雛罌粟は、砌と相対していた。しかし、そこに後方から巨大なリングが飛んでくる。
 肩まで伸ばされたオレンジ色の髪の毛に、赤い瞳。白き断罪特有の白い服を着た十六、七に見える少年が現れる。愛らしいような表情で微笑みながらも、狂気が見え隠れする。

「さぁボクも手伝うよ!」

 白き断罪第三部隊白蓮所属、舞(まい)参戦。

「二対一か、少々厄介じゃの」

 慌てた様子もなく、淡々と雛罌粟は呟く。
 此処で白き断罪を殲滅しなければ、守るべき街が消える。
 ――そんなことをはさせない。

「さぁ、我のもとへ参れ、我の可愛い双子よ」

 上空に雛罌粟は扇子を投げる。それは重力に逆らい空中でくるくると回転を始める。 扇子からは白い鳥の羽のような物を当たり一面に散らしていく。

「我は手加減せぬぞ」

 白き羽が地面に落下すると同時に、地面と同化するように消えていった。

「何をしたのかしら」

 何も効果がないように見える、その術に砌は疑問を覚える。何の効果がない術を第二の街支配者が使うとは到底思えない。勿論失敗したという可能性は考えていすらいない。
 呑気に術の効果が表れるのを待つつもりもない。メイスを半回転させて握る一を変え、雛罌粟に直進していく。迷いが一切なく小細工を感じさせない砌の行動に雛罌粟には計り知れない威力を感じる。

「ボクは白き断罪所属、舞(まい)よろしねー」

 ほぼ同時に舞が名乗りを上げ、リングを片手に砌同様雛罌粟に向かって突っ込んでいく。

「さぁ、ボクを満足させて! 第二の街支配者サン!」

 遠距離からリングを投げてくると思った雛罌粟の思惑は外れた。


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