[ 焔の銃弾は何発放とうとも全て雛罌粟の結界に邪魔され篝火や榴華に近づくことはない。勿論術の使用者である雛罌粟にも届かない。焔の攻撃は無効化された、といっても過言ではなくなった。 榴華は紫電を纏い蹴りを繰り出す。篝火も今まで通りに攻撃の手を休ませない。戦いっぱなしである篝火だったが疲れた様子は一向に見せず汗一つかいていない。 焔は銃で攻撃するも、球に拒まれ効果がないし、二人の攻撃を交わすので手いっぱいだった。 「(切実に律、戦え)」 心の叫び声が聞こえたのか、焔の隣に律がやってくる。しかし戦うつもりは毛頭なく上着のポケットに手を突っ込んでいる。焔の殺気パラメーターが上昇する。 「何だか想定より連れたから撤退しない?」 「つまりお前は知り合いに会ったから、これ以上長いしたくないという理由を誤魔化して撤退したいわけだな?」 「図星。です。はい」 「なんか、やたら丸が多いのは突っ込まないでおくけど……」 「そういう時点で突っ込んでいるだろう」 「とりあえず、乱戦になりそうだから律の提案は却下しときまーす」 焔の言葉とほぼ同時に律は頭上を見上げる。そこには想思に抱きかかえられながら宙を飛んで現れる由蘭がいた。そして二人の後方からは砌が現れる。 律はそういえば、と思いだす。焔と自分である程度の罪人を引き寄せるから応援宜しくといっていたことを。郁に再会したことで忘却の彼方へ旅立ってしまっていたかと、自嘲する。 自らがたてた作戦で墓穴を掘ることになるとは、と。 「お久しぶりですわね。御命頂きに参りましたわ」 「丁寧な言葉で、物騒な言葉を吐くな、女男」 「失礼ですわ。わたくしには由蘭という名前と、男という性別が御座いますの。勝手に混合しないで頂けますか?」 想思は由蘭を抱えていた腕から由蘭を離す。由蘭は宙から五メートル程度落下する。その際衝撃を和らげる緩和剤として風属性の術を足元に使う。その風力で衝撃を緩和しふわりと着地する。 そして以前刃を交えた事のある朔夜の方を向き礼儀正しく、お辞儀までして挨拶する。 相変わらず少女にしか見えない可愛らしい容姿に、すらりとした長い脚とミニスカート。そして足元まである水色の髪の毛が特徴的だった。一度見れば忘れるはずがない容姿。 想思は降りてくることなく、髪の毛を利用し上空からの攻撃を試みている。 砌はメイスを両手に握りしめ、ゆったりとした足取りで近づく。烙がこの場にいないのは律との不要な争いごとを避けるためにわざと外されたのだろうかと律は考える。 それは当たらずとも遠からずの結果だったことに今は気がつかない。 別段そうだったとしても、そうじゃなかったとしても律にとっては関係ないし、興味がないことだから。第一律には他に考えることがあった。 [*前] | [次#] TOP |