零の旋律 | ナノ

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「知りあいなのか!?」

 当然、一同は驚く。最も篝火は焔との戦闘に集中し、郁を振り返ることはなかった。会話すら聞こえていたか危うい。朔夜の雷も鳴りやむ。

「どういうことだ!? いきなり姿を消して行方不明だった律にぃが、何故よりによって白き断罪にいるんだ! 白き断罪は政府直轄組織だろ!?」

 朔夜の質問には答えずに、疑問を矢継ぎ早に問いかける。問われた律はしまった、という顔で郁を見る。
 懐かしい顔立ち。例え何年の月日が流れようとも忘れるわけがない。
 再会するつもりはなかった。同じ罪人の牢獄にいる以上、郁と再会するリスクは覚悟していた。しかしこの再会は予定より予想よりずっとずっと早い。

「どういうことだかは……簡単だよな?」
「……復讐」
「それ以外に何がある。俺が政府に寝返るわけないだろ」
「兄貴が……起こっているぞ」

 現状を信じられないのか。認めたくないのか、郁はゆっくりと言葉を一つ一つ口にする。

「だよなぁ……それが一番困る。真面目にどうしようか」
「私に聞くな。……とりあえず、律にぃを見つけたら一発殴るって宣言したいたから、まぁその頑張れ」

 出会ってしまったが故にどうすればいいか、わからなくなる。
 出会わなければ良かったのか。ある日、突然姿を消した、彼にとっての唯一の親友と彼にとっての唯一の親友。
 二人がいるから毎日が楽しく思えた。深い闇の中で、闇と同化しながらも。

「おい! どういった知り合いなんだよ!」

 二人だけの会話で何が何だかわからない朔夜は声を荒げる。

「あーと、えっと、唯一の兄貴の親友」

 さらりと纏めて説明する郁に、朔夜は信じられないものを見たような眼で律を見る。

「はぁ!? あの、あの、お前以外どうでもいい、冷酷非人道的な危険人物の!?」
「……いいすぎだろ」
「泉だぞ? 誰が死んでもどうでもいいような……つか実際どうでもいいっていう、朝起きるたびに目覚まし時計が一つ減っていく泉の親友!?」

 大分混乱しているのか、特に関係のないことまで口走る。

「最後のは……特に今、関係ないと思うが」
「あの泉に友達いたのかよ!」
「散々な云われようだな……泉」

 思わず、敵であるはずの律までもが口を挟む。蚊帳の外でどうるかと現状を眺めていた榴華と雛罌粟だったが、こんな状況でも休戦することない篝火に加勢することにした。

「保護者も大変だな」
「……どうも」

 雛罌粟と榴華が加勢したことで、均衡だった戦闘に傾きが見え始める。

「お主は銃弾を気にせずに、突っ込んで構わぬぞ、我が全て弾く」
「有難う」

 雛罌粟は周囲に結界術を展開する。辺りには直径三p程度の小さな光を纏った球が無数に現れる。球は何をするわけでもなくその場に浮上している。通り抜けようと思えば通り抜けられ触れようとしても触れることが出来ない代物。しかし焔の銃弾が近づくと光は突如弾け、弾丸を包み込み消え去っていく。


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