X 「ふぅん。連携はいいんだな、焔どうするいんだ?」 その手慣れた戦闘方法に感心したように律は頷いた後、焔へ視線を移す。 「俺的にはすごーく、ピンク帽子にも手伝って貰いたくて仕方ないんだけど?」 「あー、ご遠慮しておきますわ」 律の白き断罪内での主だった役割は頭脳労働。作戦を立案したりするのが律。だから、白き断罪第三部隊白蓮隊長の白圭も、律に仕事を任す時は頭脳労働が全てといっても過言ではない。 焔も律が戦っている姿をこの目で見たことはない。しかし偶に思う。この男は本当に戦闘が出来ないのだろうかと、一緒に行動を共にすることが一番多い焔は、律のことを一番知れる位置にいた。 焔と行動を共にしている以上、常に死の危機が付きまとう。敵から攻撃を受けることも多々あるし、自分が律の身を守れるとも限らない。現状だってそうだ。しかし律は常に自分の身は自分で守っていた。戦っているわけではない。ただ、交わし、逃げているだけ。 だからこそ焔は思う。本当に律が戦えないのであれば交わすことも逃げることも不可能だと。律は戦えないのではなく、戦わないの間違いで、本来なら問題なく戦える高い実力を保持しそれを隠しているのではないかと。ある種、確信的に抱いていた。しかし焔は直接律に問うたことはない。現状に不満があるわけでもないし、元々謎の多い男。今さら一つ二つ増えた処で気に留めるつもりはない。 ただ、それでも時たま思うのは戦闘が有利と言えない時くらいは手助けしてほしいと。 「俺が……」 「焔」 焔が何かを喋ろうとしたのを律は遮り耳打ちする。焔は一瞬だけ顔を顰めて律を見るが、何も言わない為耳打ちされたことを実行する。ある一点の壁を狙い銃弾を放った。 篝火や朔夜はそこにいない。何も変哲がないように見える壁がそこにあるだけ。それだけだった。 しかし銃弾が当たった部分から僅かに黒い硝子細工のような欠片が落ちる。 「なんだこれは?」 「別段気にする必要もないが、念には念を。厄介な情報の欠片さ」 「ん?」 焔は首を傾げたがそれ以上は何も聞かなかった。聞いたところで律は何も答えない。肝心なことは何一つ喋らない。 最初は焔の突然の行動に唖然としていた篝火だったが、すぐに焔に攻撃を仕掛ける。鋭い一発一発重みのある蹴り。 「ちっ」 篝火は焔から一定以上の距離を開けないように距離を詰めて攻撃する。焔は後退しながら銃を篝火に向けて放つ。しかし篝火は銃の位置からどの辺を狙っているのかを一瞬で見極めて避ける。一歩でも間違えれば銃弾は篝火に直撃する。篝火だけに専念したい焔だが、それは出来ない。油断すれば朔夜の雷にやられる。 [*前] | [次#] TOP |