零の旋律 | ナノ

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 篝火が朔夜を庇おうように、反射的に反応し朔夜を押し倒す――ギリギリで朔夜を銃弾から守った。狭い場所で銃を乱射されると不利だと篝火は表通りに出ようとすぐに身体を起こし移動を図る。その意図を正確に読みとった焔は、その意図に乗り、自らも移動する。

「こっちの思惑通りに行動してくれるのか?」
「まぁ俺としてもそっちの方が戦いやすいし、第一フェアじゃない気もするしね?」
「油断強敵だぞ。まぁその方がこっちは助かるけど」

 篝火は朔夜を庇おうように手を横に伸ばす。いざとなった時すぐに反応出来るように朔夜に小声で自分の元から極力離れるなと告げる。

「了解」

 朔夜は篝火から一定距離以上離れないように努める。最も体術を得意とする篝火と朔夜ではどうしたって距離が生まれてしまう。その辺は篝火の運動神経を朔夜は信頼する。
 最も此処で問題なのはピンク帽子の男――律だ。何もする素振りがないからといって、戦闘の相手から除外し注意を外せば思わぬところで不意打ちを食らう可能性が高い。
 早く郁が戻って来ないかと考える。そうすれば此方が有利に事を運べる。
 人数が多ければ、とかの数の問題ではない。郁の実力に対する信頼に現れだ。

「ふーん、遠距離と近距離の組み合わせか、相性はよさそうだな」

 律は呟く、それが合図のように朔夜が攻撃を始める。相変わらず偉そうな恰好ではあったが、それが朔夜にとって一番自然なスタイル。下手に慣れ親しんできたスタイルを捨てて闘い失敗しては意味がない。
 闘いの場においての失敗それはすなわち、死に繋がる。
 焔の頭上に向かって雷が振り落とされる。焔は地面を蹴り後方へ移動する。雷が落ちた場所の煉瓦は焦げ、破損する。それが止むことなく連続で落雷する。ワンパターンな攻撃ではあったが、それ故に常に一定の威力を保ち、一発一発の威力も高い。
 焔の頭上に向かって雷が振り落とされる。

「案外威力が高いな」

 朔夜が雷を落としている間に篝火が焔に接近する。焔は銃を盾代わりにして篝火の蹴りを防ぐ。篝火の攻撃がある間も雷は休まることなく落下してくるが、篝火は雷の動向を一切気にしない。
 朔夜が自分に当てるはずがないと信頼しているから。二人の信頼関係があるから、為せる技。


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